169.ラムダ、繭

あの後無事にシャトルが強化修理されて、ラムダをフォドラの民として見届けたいと言うエメロードさんも連れて、わたし達はエフィネアへと帰ってきた。
フォドラからラムダ繭まで一直線に突き抜けた結果、またしてもシャトルから放り出される形での着陸とはなったが……まあ大怪我をした人はいなかったので、成功ということでいいだろう。

「……それにしても驚きました。この繭の中がこれほど多くの生命に満ちているとは」

エメロードさんの言葉にわたし達も立ち止まる。
そこで改めてラムダ繭と呼ばれる場所を見回すが、確かに彼女の言う通り、あの白く不気味な見た目とは違って中は随分と色鮮やかな場所だ。
赤を主体にした草木があちこちから生い茂り、天井や足下には巨大な花すら咲いている。動物、という意味では魔物しかいないけれど、植物も含めた生命という括りなら、フォドラはもちろん、エフィネアのフェンデルよりも生命力の溢れた場所かもしれない。
ある意味「繭」という言葉に忠実だと言えるのだろうか。生命の力が満ちる、いつかくる進化と羽化を待つ生命のゆりかご。
この繭の奥底に包まれるラムダは、リチャードと一体になろうとしている。そうしてこの繭から羽化した時、彼らは……わたしはどうなってしまうのだろう。

いろんな気持ちを持て余しているのはわたしだけじゃない。リチャードを思ってアスベルとソフィはよく黙り込んでいるし、エメロードさんも何かを考えるような繭の中を観察している。
だが、考えている時間なんて、きっとわたしたちが思っているよりもずっと短い。ふいに地響きが鳴り響き、揺れる足下に、エメロードさんは真面目な声色で話し出した。

「ラムダが全ての準備を終え、星の核へ向かって動き出そうとする前兆かもしれません」
「……先を急ごう」

マリクさんの言葉に従って動き始める。
しばらく立ち止まってエメロードさんの背中を見ていれば、心配そうにアスベルがこちらへやってきた。

「シオリ。気分が悪いのか?」
「あ、ううん、違うよ。ありがとうねアスベル」
「なら、いいんだが……」
「それよりソフィを心配したげて。明らかにわたしより頑張ってるから」

そうアスベルの背中を押して、再び足を進める。
わたしの言った通りソフィは率先して先を歩いており、どこか……どこか、そう。
少し前までのわたしみたいな壁を感じて、何か嫌な予感にわたしはそっとアスベルの背中を握った。