170.疑うより、信じたかった

「思い過ごしであれば、それは構わん。だが、どうにも胡散臭くなってきた」
「ええ、ぼくらが目を離さないようにしたいところです」

後ろからマリクさんとヒューバートくんのそんな声がして、わたしはさりげなく、けれど確かに少しずつ歩く速さを遅くする。
二人より少し前、でもみんなからは少し後ろに離れた位置まで来て、わたしはあまり大きくない声で内緒話をする二人に話しかけた。

「わたしもあんまり信用すべきじゃないと思いますよ」
「シオリ姉さん」
「ほお。お前がそう言うとは意外だな。てっきり、お前もなんでも信じるタイプだと思っていた」
「信じちゃう方が楽なんですけどね」

その方が疑うより楽しいし、と付け足す。
だが、あんまり彼女は信じたくないのだ。何故か。彼女と話しているとお腹の裏側がこそばゆくなるというか、怖くなるというか。その姿を見ているだけで、ざわざわと胸が落ち着かなくなる。
わたしですらそんな違和感を覚えるのだから、用心するに越したことはないと言えば、二人から意外そうな視線が向けられた。

「なんというか、悪人なぞいない。いてもそれは美味しいのだ……とか言うのかと思ってました」
「むしろオレは、ああいうタイプの悪人は大変に好物ですでも好きなのはアスベルですとでも言うのかと……」
「ねぇ二人マジにわたしをなんだと思ってらっしゃる? しかもマリクさんは何を言ってるんですか!」

まあ普段があれだから仕方ないかもしれないけどね! そのことについては否定しないし、実際疑うよりも信じる方が気が楽だし、悪人だろうがなんだろうが博愛対象であるのは事実、なんだけど。二人は本当にわたしを何だと思ってるんだ。
あとマリクさんは本当にそのネタで遊ぶの止めてほしい……そ、そんなにわたし、アスベルが好きって、わかりやすいかなあ。

「しかしまぁ、お前も何か吹っ切れたみたいだな」
「そうですね。前と少し雰囲気が違う気がします」
「……みんな、わたしを簡単に受け入れてくれたしね。思い出したし、すっきりしたんだよ」

わたしはわたしだと言ってくれた時のみんなを思い出して、自然と頬が緩む。
もう帰る場所が無くなった、なんて思う暇もなく受け入れてもらえて、本当に嬉しかった。
そう、ここはわたしの大切な場所。
だからわたしも、ちゃんと戦うよ。
あの子との約束を、ちゃんと守るから。