がっくりと膝をついたセルディク大公は、忌々しそうに血を吐きながら言葉を吐き出した。
「ようやく王位を手に入れ、これからという時に……」
「王座は王を選ぶ……貴方は選ばれない存在だった。それだけの事です」
リチャードはそっとしゃがみこんで、彼の肩をぽんと優しく叩く。
そして……その目を細めて、剣を握った。
「死ぬ前に理解出来て良かったですね。叔父上」
途端にセルディク大公の絞り出すような呻き声が響く。それが断末魔に分類されるものだと理解して、わたしは思わず後ろに下がった。
これがリチャードの目的だとわかっていたはずなのに、見ていられない。
それを察してくれたのか、アスベルがわたしの視界を遮るように前に立った。
「おっと忘れていた。これは父上の分です」
だからリチャードの様子を見る事は出来なかったが、もう聞き慣れてしまった何かを切る音と、シェリアがさっと顔を逸らしたのを見て、再びセルディク大公を斬りつけたという事がわかる。
もう、死んでいるというのに。
「……リチャード、もうやめろ!」
「これでやるべき事はやった。同じ場所で倒れた父の無念も少しは晴れるだろう」
アスベルの声を聞いたからなのかはわからない。
だがリチャードがどこかぼんやりとした声でそう言うと、まるで見計らったようなタイミングでデール公がやって来た。
「どうやら見事に本懐をお遂げになられたようですね。おめでとうございます」
「デール、外の首尾は?」
「内通していた者が城門を開き、味方を無傷で王都に入れる事が出来ました。抵抗を続けている兵の数は多くありません。まもなく制圧されるはずです。これで……終わりましたな」
「いや、終わりじゃない……これは始まりだ。ウィンドル王国の新たな歴史が始まるんだ。そうだろう?」
「ははーっ!」
突然、打ち合わせでもしたかのように揃って膝をついた全員に、思わず目を瞬かせる。
ソフィとわたしが顔を見合わせると、パスカルが慌ててわたし達を肩ごと押さえ込む形で座らせた。
ああ、「なんとか様の、おな〜り〜」みたいな事かと理解して大人しく従う。
「まずは戴冠式だ。僕が王位についた事を内外に広く知らしめなければ」