「リチャード! よくもここまで!」
男の人の声が広い王座の間に響いた。
その声の主はもちろん、セルディク大公だ。リチャードのお父さんを暗殺して、リチャードを殺そうとして、王座を手に入れようとした、リチャードが倒さなければいけない人。
王座の間というだけあって広く厳かなそれだが、置いてあるのは王座だけ。彼を守る人はそこに誰もいない。ただ一人、王座の前に立つセルディク大公を見て、リチャードはすぅっと目を細めた。
「王都は我が軍勢により完全に包囲されています。あなたはもう終わりです」
「貴様……本当にあのリチャードか?」
「何を当たり前の事を」
リチャードの表情に何か違和感を覚えたのか、疑問の表情を浮かべたセルディク大公だったが、この状況で普段通りのはずがないと思い直したのだろう。すぐに大剣を構えた。
「父上の仇をとらせていただきます!」
「今度こそ、兄の後を追わせてやる。王位に相応しいのは、この私だ!」
「ランバートサイン!」
パスカルが自分を中心に青い陣を発動して、近くにいたみんなに薄い防御の膜を張ってくれる。
前線に突っ込むための準備がすんで、アスベルとソフィとリチャードが一気に距離をつめた。それぞれが攻撃を途切れさせないようにしてコンボを繋げ、相手の反撃を封じる。
「断空剣!」
「甘いわ! はあぁっ!」
しかし、セルディク大公の剣は大きい。それだけで攻撃はもちろん、防御にも使える。
扱い慣れているのだろう大剣を振るって周りにいた三人をなぎ払い、彼らの猛攻を抜けると、後方で構えていたわたしの方まで突っ込んでくる。
「っ!」
「シオリ、下がっていろ! 裂壊桜!」
一瞬怯んでしまったわたしを庇うように、少し離れた場所からアスベルが衝撃波を飛ばしてくる。
わたしはその隙に距離を取って、回復を唱えるシェリアやソフィ、そしてパスカルの傍まで下がる。
……詠唱中の彼女達を守るためだ。だが、ふと足下にビリビリと音を立てる青い光があちらこちらに落ちているのが見えた。
「アスベル、足下になんかビリビリしたのがあるよ! 気を付けて!」
「みんな触らない方がいい、麻痺状態になってしまうよ!」
「あっちゃあ〜……」
わたしの声に反応してリチャードが忠告してくるが、もう遅かったらしい。
体を動かしにくそうにするパスカルに、シェリアが慌てて治癒術を唱えた。
「パスカル! ……この名において戒めを失え! リメディ!」
「ありがとシェリア! ウィンドニードル!
回復してすぐに術を唱えたパスカルに頷いて、ソフィも再びセルディク大公の下へ走る。
蹴りを主体とした攻撃を食らわせ、それからアスベルの抜刀のように勢い良く斬りつけた。
「やぁっ! アストラルベルト!」
「邪魔だ! 魔王爆焔破!」
ソフィと、それからアスベルとリチャードを巻き込む形で炎を纏った大剣が振り下ろされる。
その威力は、少し離れたこっちにもダメージが来るんじゃないかと焦る程だ。
火の粉を払ってやれば、シェリアがすぐに治癒術を唱え始めた。
ソフィも後ろに下がって、彼女が出来ない分の回復に回る。
「紡ぎしは寛容、その輝きに名を与うる……ピクシーサークル!」
「くっ……快方の光よ宿れ、ファーストエイド!」
二人が回復する間に、わたしは少し前に出て省略版の陣術を唱えた。
それはうまくセルディク大公の足止めになり、わたしはそのまま斬りつける。
「ガチガチヒェッシュ! んでもって星流!」
「!」
「リチャード!」
アスベルが呼べば、リチャードは頷いた。
この戦いのトドメは、彼がささなければいけない。
「一瞬で決める!」
一気に距離を詰めて、それから何度も突きを繰り出し斬りつける。
そして、まるで薔薇の花を散らすかのように、セルディク大公から血が吹き出した。
「剣閃よ唸れ、疾風のように!」
そして、セルディク大公は、沈んだ。
「ヴァーテクス・ローズ!」
彼の、言葉と共に。