4.まだ続く、いろいろ

久しぶりのバロニアは、前よりも一層華やかに映った。
今までがフェンデル中心にたまにラント、という感じだったせいか、穏やかな気候に合う服さえ華々しく見える。
心なしかみんなの表情も晴れやかで、リチャードが民から信頼され愛されているのがわかった気がした。
荘厳なバロニア城門を潜り、王の間で三人並ぶ。王の間に入る事自体、セルディク大公と戦った時以降初めてなので、なんだか緊張してきた。

「なんか、こんな風にリチャードに会うのって初めてかも……」
「そうか、お前やパスカルは半年前、里にいたんだったな」
「懐かしいね〜、結局ソフィに勝てないまんまだなぁ」
「ソフィは強すぎるもんね」

約束通りフォドラから帰った後、救護団が一段落着いたあたりでシェリアがソフィを連れてアンマルチアの里に来たのだ。
その時はまだアスベルが溜まった仕事をさばいている途中だったから、里に集まってポーカーを……えぇと、結局何時間やったのだろうか。相変わらずソフィが圧勝だったが、後半のシェリアの大奮闘は凄まじく、最終的にはわたしが負けてしまった。
楽しかった時間を思い出しているとリチャードがやってきたので、慌てて頭を下げる。友達ではあるけれど、これくらいの礼儀はきちんとしないとね。鎧の音を鳴らして姿勢を正した部下達に囲まれ、リチャードが王座に座った。

「シオリ、パスカルさん、マリク。ご足労感謝するよ」
「いえ。情報の共有はとても重要なことですから」
「そうだね。しかし、なかなか落ち着かないね、この世界は」

そう苦笑を漏らすリチャードはどこか疲れて見える。
それにしても、報告だけと聞いていたわたしとしては引っ掛かる会話だ。
なかなか落ち着かないだなんて、また何か問題でも出て来たのだろうか。
どう聞き出そうかと思っていると、わたしの様子にパスカルが気付いたらしい。
いつものように体を伸ばして、そっと教えてくれた。

「たぶん、魔物の過剰進化の名残だとは思うんだけどね。魔物の数が増えすぎたのと同じように、エフィネアの原素が少し濃くなったんだよ」
「濃くなった?」
「そんなに危険視するほどじゃあないと思うけどね。お姉ちゃんも言ってたし、魔物の数が減ったら元通りだと思うよ」

単純に増えるだけなら問題はない。ストラタのように資源として使っているくらいなのだから、むしろ嬉しいくらいだ。
ただ、困るほどじゃないとは言っても異常であることも間違いない。エフィネアの星の核が過剰に働けば、そのせいで魔物も強く成長してしまうわけだから、やはり心配にもなる。

「なら、やはりまだしばらくは魔物討伐に重点を置くべきだね。それは、フェンデルも同じ意見かい?」
「ええ。特にフェンデルは今、ようやく市民の生活水準が上がってきたところですから」
「そうだよね……さて、これはここまでとは違う話だけど、シオリ」
「はい」
「敬語はいらないよ。アスベルには伝えたけど、君にもどうしても伝えたくてね」

急に何を、と目で問えば、彼はまず今までの話とは関係ないよと前置きをする。
どうやら単純にわたしと会話したいだけのようだ。
アスベル、という単語があったから、たぶんそれ繋がりなのだろう。
彼は穏やかに笑った。

「君の幸せは僕達の幸せでもあるんだ。だから、どうかこれから幸せでいてほしい」

それはつまり、これからの未来を祝う言葉だ。
わたしはほんの一瞬息を飲んで、それからふわりと笑う。

「……ありがとう。リチャード」