魔法少女は恋をしない

絢瀬あやせさん、高校生の人とお付き合いしてるって、本当?」

うきうき。わくわく。そんな言葉が似合うくらいにきらきらと輝いた目をしたクラスメイトにそう問われて、それまで友達としていた会話を中断して、きょとりと瞬きをする。
お付き合い、というのは、つまり恋人がいる、という意味だろう。私たちはまだ中学生で、十四歳で、まだお付き合いなんて話題は早いんじゃないかと思うけど。むしろ、だからこそ年上の人とお付き合いしている、というところに食いついているのかもしれない。
でも事実として、お付き合いしている相手なんて、当然「私」にはいない。五年前の「陽葵ひまり」にだっていなかったはずだ。いや、そこまで彼女のプライベートを把握していたわけじゃないけど、ここまで連絡を取ったこともない。五年間音信不通になるような相手をそうと認めたくはないので、やっぱりいない。
でも、目の前のクラスメイトはいると信じて疑っていないようだ。どこからそんな話が出たんだろう、と不思議に思いつつ、なるべくにこやかに返事をする。

「誰ともお付き合いなんてしてないけど……」
「ええ〜? でもいっぱい噂になってるよ?」
「そう言われても本当のことだし……その人、私と付き合ってるって言ってるの?」
「言ってないけど……でも絶対、付き合ってると思ったんだけどなあ」

違ったんだあ、とあからさまにがっかりしてみせる彼女たちに、私は困ったように笑うしかできない。というか、相手がそう言ったわけでもないとか不明確な噂過ぎる。噂ってそんなものだけど、そんなものに簡単に流されないでくれ、とは、言えなかった。
だって「陽葵」は、あんまり人の噂や評判を気にしないから、ここで話は終わってしまうのだ。

「ちなみに、その人って誰?」
「あたし達が知る限り、候補は一人くらいしか思い浮かばないけど……まあ、一応、教えてほしいな」

でも、いくら私に興味がなくて話が広がらなくても、友達もそうとは限らない。隣で聞いていた二人の友達はやっぱり興味深そうに。でもちょっとどこか、呆れた感じでそう問いかけてくれた。
一人くらいしか思い浮かばない、と言われて、もしかして、と少し嫌な予感がしたところで、クラスメイトは嬉しそうな顔でその名前を言った。

「優月先輩!」

やっぱり〜、とか、だよね〜、なんて声が教室の一角に響く。その人以外いないと思った、とは、中学に入学してから二年間、仲良くしてくれている彩愛の言葉だ。
まあ、確かに、私がよく一緒にいる高校生といったら、先輩しかいない。でももちろんそんな関係ではないし、そうなる予定もない。ないのに、当たり前のように言われて、ひく、と頬がひきつった。

「……先輩と……陽葵が? お付き合い……?」

想像する。想像してしまった。二人、仲良く手を繋いだり、身を寄せ合ったりする、恋人になった二人の想像を。
ぞわりと耳のあたりが熱くなるような気がして、思わず、力いっぱい叫んだ。


「絶対やだ!!」




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ごちゃ。