XX2▼きみしか抱けない

都合の良い、夢を見ている。
頬に触れる熱い体温も、熱を孕んだように見えるその双眸も、自分に都合よく作られた脳の御褒美だ。
「美月」
するりと、固い親指が頬を滑る。
「好きだ」
体を、力強い腕に、引き寄せられた。
「美月がさ、本当はオレじゃなくてもよかったこと、わかってんだ」
そんなわけがない。
武以外の人間など、わたしにとっては塵に等しい。
「美月が最初に会ったのがたまたまオレだっただけで、そいつがオレじゃなかったら、今ここにいんのはオレじゃないんだろーな」
なにをいっているの。たけし、わたしにはわからないよ。
「だから美月の気持ち、知らないふりしてずっと過ごしてきたんだけどさ」
触れ合った部分から、鼓動が響いてくる。理解できない言葉と、不規則なリズムとは、今経験している全てが夢ではないと、訴えていた。
「オレ、やっぱそこまで人間できてねーのな。初めて美月に会ったのは、もうオレなんだよな。もしも違ったら違ったんだろうとか仮定の話は、もう今は、どうでもいい」
少しだけ、抱きしめる腕の力が弱まった。
彼の胴着から顔を上げると、少しだけ色素の薄い、茶がかった瞳が、ずっとほしかった熱を宿して、こちらを見ていた。
「美月、これから先もずっと、オレだけ好きで、いてくんね?」


[ 20/20 ]

×