3人目離れ
ーー女々しいのは嫌い。
たった今気付いた、一つの奴への嫌悪。
空気を振った利き手の手首を、
強引に掴む奴の利き手の爪が、
まるで針でさされているように痛い。
ーー女々しい顔つきも嫌いだなって、
また気付いた、二つ目の奴への嫌悪。
泳いでる自分の目と、
涙の海を泳いでる奴の目が、
狭い視界で重なりあって、苦さが舌に乗る。
苦さは毒になった。
「お前は、死んだ人間の面影を
僕に重ねているのか」
毒は、殺したい相手にすべて捧ぐ。
「よしてくれないか、気持ち悪い」
毒は確実に相手に回ったらしい。
目の前の男は、歪んだ顔で
苦しげにこちらを睨んでくる。
僕は掴まれている腕を振り払い、
舌打ちをしてその空間から背を向けた。
歩むたびにミシミシとなる床の音に紛れて、
震えた声が僕の名を呼ぶのが聞こえる。
ーーあぁ僕はこの人の事が嫌いなんだ。
ふと、そう思った。
思った瞬間、同意した。
肯定した。認めた。
僕はこいつが、苦手で嫌いだ。
ーーもう一緒に、暮らしたくもない。
顔も見たくない。
嫌いだ、嫌いだ、嫌いだ。
皆城総士は部屋を出る。
寂れた廊下をゆっくりと歩む。
背で、啜り泣きをききながら。
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