Chapter9 〜流転〜

その頃。
死神代行黒崎一護は、朽木の屋敷の縁側で、空を見上げていた。
―護りたいから護るんだ。俺の魂に掛けて。
狩矢が言った言葉に、そう返した自分自身。
後悔などしてはいない。
寧ろ清々しささえ感じていた。
けれど、何か心に重い物が残るのは、狩矢が何処か、自分と似ていたからだろうか。
考え方が、では無い。
境遇が。
生き方が。
二つの世界の狭間で苦しんでいたバウント達が…死神代行でありながら死神では無く、人間でありながら人間でも無い。
そんな、自分と…少しだけ。
「何ぼぅっとしてんだよ」
「うぉ、恋次!」
現れたのは額に白い布を巻いた阿散井。
真っ赤な髪が、今日も今日とて暑苦しい。
「片付いたのか?」
建物の損害や、巻き込まれた死神達の治療はまだだろうが。
少なくとも、混乱は治まったのだろうか。
そう問いを投げる。
「まぁ、大体はな。つーか、元はと言えばてめぇらがこっちにバウントなんざ連れてくるからこんな事になったんだろうが!」
「うるせぇな、仕方ねぇだろ?!大体、てめぇもあの場に居たじゃねぇかよ!」
「俺はあの時バウント一体仕留めただろうが!そのせいで蛇尾丸にダメージが残っちまったんだよ!」
「それって弱いってことじゃねぇのか?」
はっと鼻で笑うと、恋次が鬼の形相で掴みかかって来た。
「てめぇ…ちょっと腕上げたからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!てめぇはあくまで死神代行であって、死神じゃねぇんだからな!」
「あーはいはい、悪かったって」
「思ってねぇだろ」
「思ってる思ってる」
「その妙に投げた態度が余計ムカつく」
一護が胸倉を掴まれて、揺さぶられていると、後ろでがばっと布団から起き上がる気配がした。
「お、ルキア。起きたか」
「随分と騒がしい様だが」
目を覚ましたルキアに声を掛けた一護だったが、ともすれば、氷輪丸の創り出す氷よりも冷たい声音にぎぎぎと其方に顔を向ける。
「兄等は此処が何処か、失念している訳ではあるまいな」
いつも以上に機嫌の悪い白哉に、冷や汗を流す一護と恋次。
ルキアは兄の不機嫌な理由を何と無く察し、空を見上げる。
其れとほぼ同時。
空に虹色の光が広がった。
人の心を穏やかにするその光は、瞬く間に建物の破損を修復し、殺気石で出来た懺罪宮までもを元の姿に戻してしまう。
「あれは…」
「この霊圧…」
「玲か」
ぽつりと呟いた白哉に、一護は蒼白になって詰め寄った。
「いやいや、あの光、懺罪宮まで治してたぞ?!殺気石ってのは霊力通さねぇんじゃ無かったのかよ?!」
「彼奴に理屈を求めると、疲れるだけだ」
「どんな順応だよ、それ?!」
思わず突っ込む一護の視界の隅で、金色が煌めいた。
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