Chapter10 〜予兆〜

目を覚まして首を傾げた。
そこは昏い闇の中。
何も存在しない虚無な空間。
けれど、視界の端に七色に輝く命に溢れた場所が広がっていて。
そこが自分の精神世界なんだと自覚する。
天照と月読が、侵食し合う不安定な場所。
今は月読の力が膨張しているからだろう。
闇に覆われた空間の方が多い。
中央に、四色の鎖に身体を縛られてもがいている男が居る。
端麗な容姿は神が故か。
吐かれる暴言は、お世辞にも綺麗とは言えないけれど。
私は彼に近づいた。
紅玉の様な紅い瞳が、此方を睨みつけるも、気にしない。
「チッ来たのかよ。依代さんよぉ。てめぇなんざ呼んだ記憶はねぇんだがなぁ!」
「私が用があるのよ。それ、貴方だけじゃ解けないでしょうし」
「あぁ?!解くつもりなのか?折角俺の自由を奪えたのによぉ!」
「只で解いてなんてあげないわ。具象化なさい、月読。屈伏させてあげる」
そう。
天照は最初から卍解も出来る。
つまり屈伏状態なんだけれど。
月読は、卍解は疎か始解の解号すら知らない状態。
暴走して当然なのだ。
彼等は自らを神と言うが、今は斬魄刀に違いないのだから。
「ざけんじゃねぇ!てめぇなんざに誰が力貸すかよ」
「あら、最初から負ける気なのね。破壊の神が聞いて呆れる。唯の依代と戦うのが怖いの?」
「あぁ?!調子に乗ってんじゃねぇぞてめぇ!上等だ!てめぇの精神、天照諸共破壊して乗っ取ってやらぁ!」
「そう。やれるものならやってご覧なさい。封は二日後に解いてあげる。それまで大人しくしてなさいね」
天照の力を借りるつもりはない。
そうでなくとも、私の中に、別の大きな力が目覚めようとしている。
それは自覚できていたから。
大丈夫。負けはしない。
そう、自分に言い聞かせて。
私は意識を手離した。
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