Chapter11 〜化身〜





三番隊隊主室にて、副官お手上げの書類を片付けながら、私はお茶をこくりと飲んだ。

独特な苦味のあるそれは、多分高級な玉露。

そして、書類は大分無理して減らされている事を伺わせるほど少なかった。

そこまで違和感を感じていて、黙っている訳にも行かない。

殆ど視線を合わせない吉良を見遣って、湯飲みを置く。


「ねぇ、吉良君。書類、これだけじゃ無いでしょ?」


「…どうしてだい?」


「貴方と同じ現世任務に降りてた修兵の部屋は書類倉庫。行ってなかった桃の所でさえこの倍はあったけど?」


問い詰めてみると、気まずそうに目を逸らす彼に息を吐く。


「出来ない書類だけでいいから、出して。終わったら直ぐに出て行くから」


「あ、僕はそんな…」


「良いよ。どちらかと言うと貴方の反応が正常。私の存在を簡単に認められる周りがちょっと異端なだけ」


自分で言ってて少し悲しくはなるけれど。

力を隠しもせずに振るう事で、畏怖を示す者が現れる事ぐらい初めから承知していて。

それは奇しくもバウントのリーダー狩矢が言った通りの反応なのだから。


「すみません。…お願いします」


何処に隠していたのか持ってこられた書類の束に少し微笑む。


「うん。後、如何しても出来ない書類があったら何時でも声かけてくれて良いよ?それが嫌なら、十番隊か六番隊の隊長宛に回しちゃってくれれば、やってあげるから」


「…どうして」


絞り出す様な声は、少し震えていた。


「吉良君、顔色悪いから。暫く、あまり寝てないでしょ?」


だって現世任務に就いて居たのに、書類がこれだけなはず無い。

隊長不在の此処は、書類倉庫の様に、とは言わないけれど、机が埋もれるぐらいには溜まっていたって不思議は無いのだ。

それを察して、総隊長は私を差し向けたのだろうから。


「…そう、ですね」


疲れたように肯定する彼を見兼ねて、私は手許に虹色の光を集束させる。

形作られた沢山の小さな丸い錠剤を、小瓶に詰めて彼に渡す。


「これ、一刻でその人に必要な睡眠が取れる調整薬。前に修兵にも渡したの、知ってるでしょ?」


以前宴会を開いてくれた時に愚痴を零す檜佐木に餞別として渡したのと同じ物。

彼が素直に飲むとは思えないけれど、何もしないで居るのも無理だった。


「たった一刻で…?」


「うん。気になるなら飲んでみれば良いよ。その間に片付けちゃうから」


「いや、就業時間内に寝る訳には…」


興味は有るが、真面目さがそれを許さない。

そんな風に首を振る彼の口に、なら大丈夫かと、同じ薬を創って放り込んだ。

私を信用出来ないから飲めないという訳では無さそうだったから。

まぁ、少なからずそれもあるかもしれないけれど、些細なものなら薬の効果を知れば薄れる。

そんな思惑と共に。

酷い睡魔に襲われてふらふらになっている彼を黙って長椅子に寝かせた。


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