Chapter15 〜胎動〜





その頃、冬獅郎はと言うと。

限定解除の許可通知が来ないが故に、帰刀したルピに押されていた。

八本の触手のような物は斬っても斬っても再生する上、先端から出せるらしい棘のような物を防御しきれずに頬から血が流れている。

元々これの相手をしていた檜佐木は血塗れで地面に倒れている。


―卍解、した方が良いか…。


限定解除さえ出来ればこの程度の破面、始解でどうにでもなるのにと、歯噛みする。

霊圧の上昇で扱える氷の絶対量が増えたとはいえ、やはり始解と卍解では使える技にも違いがある。

鬼道で触手を弾きながら氷龍を本体に飛ばすも、硬度も冷気も足りないのか、三本程の触手で防御されてしまう。


「仕方ねぇか…」


ヤミーと対峙している乱菊もそろそろ消耗している。

幸い相手は解放するつもりはない様だが、相手は十刃。

長引くと危ない。


「卍解」


霊圧が渦を巻いて大気を揺るがす。

圧倒的な冷気が周囲に広がって、氷の翼が形作られ、急所の首と手足も氷に覆われる。


「大紅蓮氷輪丸」


ちらりと背後を見遣って、氷の華が浮かんでいる事に舌打ちしつつ、ルピを睨む。


「へぇ、それが隊長クラスの卍解ってやつ?どれぐらい変わるもんなのかなぁ〜」


くすくす笑いながら、八つの触手で攻撃を仕掛けてくるルピを、刀の一振りで凍らせ、閉じ込める。


「悪いが…十刃でもねぇてめぇに構ってる暇はねぇ」


止めを差すべく刀を構えると、今までぼぅっとしていた破面が飛びかかって来て、刀で防ぐ。


「ッチ!何なんだ此奴はっ」


防いでいる手とは逆の手に赤い光が集って、はっと目を見開いた。


―虚閃か?!


氷の翼で自身を覆って防御態勢になるも、弾き飛ばされる。

氷に閉じ込めた触手野郎も、そろそろ出て来る。

つっと冷や汗を浮かべた時、赤い斬撃が目の前の破面を弾き飛ばした。


「どうも〜。苦戦してるみたいっすねぇ」


呑気な声と共に現れた下駄帽子に溜息を吐く。


「煩ぇよ。限定解除の許可が下りればこの程度…」


「おや。それじゃ、元の貴方じゃ勝てなかったって言ってるのと同じっすよ?玲さんが上げてくれた霊圧、何割っすか」


「浦原…後で覚えとけ」


怒りからか、冬獅郎の纏う冷気と霊圧が、上がっていく。


「覚えておくだけなら、得意っすよ」


にやりと笑う浦原に刀を向けたい気持ちを抑え、冬獅郎は刀を構え直した。


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