Chapter15 〜胎動〜
翌日。
仮面の軍勢にも治せなかった一護の戦闘の傷が癒えていて。
井上の部屋に設置された巨大な通信の前に、一護、ルキア、冬獅郎、乱菊、修兵、恋次、私の現世に駐在している死神が全て集っていた。
織姫が此方に着いていない件について、浮竹が拉致若しくは殺害されたと予想し、話を進めるも、一護が声を荒げて手を翳す。
朝起きたら傷が治っていた事。
手に織姫の霊圧が残っている事を。
「これでも死んでるっていうのかよ!」
―馬鹿。そんな事言ったら…
「そうか。それは残念じゃ」
浮竹に変わり、総隊長が画面に現れる。
「残念?どういう意味だよ」
「お主の話通りなら、井上織姫は確かに生きている事になる。しかし、それは同時に、一つの裏切りを意味して居る」
目を見開く一護に、元流斎が言葉を続ける。
「もし拉致されたなら、去り際にお主に会う余裕などあるまい。即ち、お主の傷を治して消えたという事は、井上織姫は自らの足で破面の元へ向かったという事じゃ」
「馬鹿ヤロー!」
画面越しの元流斎に殴りかかろうとする一護を、恋次が止める。
「止めろ!これ以上話しても立場を悪くするだけだ」
一護の耳元でそう告げて、彼は画面に向き直る。
「お話は分かりました、総隊長。それでは、日番谷先遣隊が一、六番隊副隊長阿散井恋次、反逆の人井上織姫の目を覚まさせるため、虚圏へ向かいます」
毅然と立ち向かう恋次だけれど、それじゃ一護と変わらない。
「為らぬ」
だよね。
「瑞稀玲よ、もう良いな」
「うん」
これ以上、現世に用はない。
「ならば、日番谷先遣隊は即時帰還し、尸魂界の守護に着いてもらう」
その言葉に、ルキアが瞳を揺らす。
「それは、井上を見捨てろという事ですか」
「一人の命と世界の全て。秤にかけるまでもない」
死神はバランサーだ。
彼等の仕事は世界の守護。
当然の判断なんだろう。
「お恐れながら総隊長、その命令には、従いかねます」
画面越しの元流斎を睨む様に告げるルキア。
私は黙って彼女の頭を撫でた。
「玲…」
「一護、これ」
錯乱状態の一護に、一枚の紙切れを渡す。
画面の向こうの元流斎が目を細めたが、手で、後でと合図を送る。
そのまま空間に手を翳すと、穿界門が開かれる。
中から六羽の地獄蝶が出てきて、周囲を舞った。
「ほら、帰るよ。ルキア、冬獅郎、乱菊、恋次、修兵」
振り返らずに、穿界門へと歩き出す。
背後に、五人の死神が付いてきている事を気配で読み取って、目を閉じた。
-始まる。
戦いが。
でも誰も、死なせない。
これは私のエゴだ。
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