Chapter4 〜華奢〜

日の光で意識が浮上して、けれど酷く安堵する香りにまた微睡みに引き戻される。
目の前の浴衣を無意識に掴むと、小さな溜息が落ちてきて。
「玲、起きろよ」
耳許で囁かれる声が擽ったくて首を竦めると、かりっと耳を齧られて、背に走った衝撃に跳ね起きた。
「っー冬獅郎!」
ばっと噛まれた耳を抑えて彼を睨むと
「耳、弱過ぎだろ」
くっと意地悪な笑みを浮かべて、からかって来る銀髪の青年。
一緒にベッドに入ると、結局いつもの様に抱き締めてくれた彼は酷いことは何もしなくて。
けれど、どことなく吹っ切れた様に見えるのは気のせいなんだろうか。
「不意打ちなんて卑怯だよっ」
尚も可笑しそうに手で口許を隠す冬獅郎をきっと睨むと。
「ふぅん…なら、不意打ちじゃなきゃ良いのか?」
そう言って笑みを深くする彼に、軽く脳が警鐘を鳴らして。
ベッドから飛び降りると、追っては来ない所を見ると、揶揄われただけの様だった。
むっとしながら浴衣を軽く整えて、キッチンに立つと
「良いから座ってろ」
後から来た冬獅郎に追い払われて。
淹れてくれた紅茶と呼ばれるお茶に口を付けて、程よい渋みと癖になる清涼さに、綺麗な色のそれを見つめる。
丁度出来上がった朝食を持って現れた冬獅郎に
「これ何処で売ってるの?」
と問うと。
「気に入ったのか?」
皿を並べながら問い返されて頷いた。
「今度連れてってやるよ」
「本当?」
ぱっと目を輝かせると、冬獅郎は苦笑を浮かべた。
会った時と比べると、良く笑う様になった冬獅郎に笑みを向けて。
作ってくれた簡単な朝食を食べる。
簡単って言っても、焼き魚とか、具沢山のお味噌汁とか、どうやってこの短時間で作ったのかと少し首を傾げたくなるような物だったけれど。
この人以外と家事スキル高いのかもしれない。
先日情報で覚えたばかりの私は此処まで手際よく出来ないから。
「お前が作った方が美味いけどな」
表情で考えていることが分かったのか、そんな事を呟く冬獅郎のそれは。
「情報量多いだけだもん」
私には軽い嫌味に聞こえて頬を膨らませる。
そりゃあ何十年生きてる彼と、形を成してたかだか数日の私が張り合えるわけ無いのだけれど。
「ただの慣れだろ」
「じゃあもっと、作る」
何となく悔しいのは何故なんだろう。
意外と私負けず嫌いなんだろうか。
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