Chapter4 〜華奢〜

「…分かった。一緒に居てやるから…」
そっと髪を撫でると、少しずつ玲の震えは治まって。
恐る恐る羽織を掴む手を、振りほどく事なんて出来る訳が無かった。
暫く離れそうに無い玲に、ここ最近慣れてきた冷気を操ってグラスを作り、そこに水を満たして渡すと。
きょとんとしながら受け取った玲が、俺の腰に挿さっている氷輪丸を見遣る。
「…なんか天照に似てきたね」
その言葉は独り言なのか、氷輪丸に向けた言葉だったのか。
こくこくと動く白い喉や、未だ涙に濡れた瞳に触れたい気持ちは変わらない。
けれど。
結局、怯える此奴に痛む心を俺が持ち合わせている以上、手を出すなんて出来ないのかもしれない。
酔いはある程度覚めたのか、自分でシャワーを浴びに行った玲を見送り、自己嫌悪する。
「馬鹿か、俺は…」
もし彼奴が怯えて逃げ出しても、自分を警戒する様になっても。
本気で拒絶されたとしても、この感情を殺す事などもう無理に等しいと分かっているのに。
自分で自分の首を絞めようとするこの面倒な性格は、どうにもならないらしい。
深く溜息を吐いた俺を
「冬獅郎、疲れたの?」
髪を濡らしたままの玲が覗き込んで来る。
琥珀の瞳はいつも通りで、そこにはもう警戒の欠片もなくて。
俺は色々と諦めた。
結局、俺が自分を制御出来れば良いだけの話だ。
此奴を傷付けないように、自分の首を絞めない様に。
「…いや、俺も入るか」
「うん。あ、冬獅郎、キッチン借りて良い?」
「何するんだ?」
「だって、今日の冬獅郎、飲んでばかりで食べてないでしょ」
疑問符すらない、確信を持った言葉に一瞬言葉を失う。
「だから作るね」
「…悪い」
見ていたのか、それとも何処かで気付いたのかは分からない。
それでも、ふわりと暖かくなった心に自嘲して。
俺は浴室に入った。
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