Chapter5 〜遊戯〜

六番隊に戻って来た私は、今朝の礼を言ってくれる死神達を笑顔で交わして、隊主室に駆け込んだ。
「白哉!」
「何事だ」
執務中の彼が筆を置くと、私は紗を肩から外して白哉の首に問答無用で巻き直した。
「こんな高い物普通に貸さないでよ、馬鹿ぁ」
若干涙目になりながら。
白哉は暫く動きを止めた後、瞳を僅かに細くする。
「誰に聞いた」
「…?冬獅郎」
「彼奴か」
呟いて立ち上がった白哉に、私は虚を突かれて固まる。
「白哉、何処行くの?」
「十番隊に決まっておろう」
「…何の為にか、聞いて良い?」
「余計な事を吹き込んだ奴に仕置きするのだ」
「余計じゃないからね?!」
彼の気迫に危うく流されそうになった私は、歩き出そうとするその袖を引いて止めた。
「後、一つ先に伝えとく」
「何だ」
「後四半刻もしないうちに隊主会があるよ。そこで総隊長が私を何て言っても、唯のゲームだって事だけ、忘れないで」
彼は信じてくれるだろうかと、少し不安に揺れた瞳に、漆黒の眼差しが向けられる。
「何があった」
少し屈んで視線を合わせてくれる彼に、経緯を説明すると、そうかといつもの様に頷いてくれて。
「必要な事なのだろう?」
そうしなきゃならない事情は伝えていないのに、まるで何もかも見透かす様な言葉と共に髪を梳いてくれる。
「案ずるな。私は己が見聞きしたことしか信じぬ。指示があれば動きはするが、そこに感情は伴わない」
優しく撫でてくれる手に安堵して、擦り寄った。
「ありがと。夜にちゃんと説明するね」
頷いて抱き締めてくれる手が背の素肌に触れてぴくりと肩が揺れると、白哉が耳元でふっと笑った。
「…やはり隠した方が良い」
「…後で創る」
少し熱を帯びた顔を上げられずに、羽織を握って俯く。
「恥じらっておるのか」
何処か、からかう様な色を孕んだ声に応えずに彼の首元に顔を埋める。
少し気になる彼の表情も、今は見る勇気が無かった。
また頭を撫でる手に少し落ち着いて、握っていた羽織を離すと、離れた温もりにちくりと痛んだ胸に困惑する。
冬獅郎の時とは少し違う、何処か空虚さを孕んだ痛み。
思ったよりも白哉に依存している自分に気付かされて、小さく息を零した。
自分から彼を試す様な事をしておいて、それを不安に思う心の脆さに。
「何が不安だ」
表情を読まれたその言葉に、小さく首を振る。
私はまだ、この心の痛みが何から来るものなのか、理解出来ていない。
分からなければ、どんな言葉が解決させるのかも分からない。
確かに心はあるのに、何処か自分のものでない様な不安も、要領を得なくて言葉に出来ない。
だから
「分かんない」
それしか言えなくて。
「…そうか」
それでも、また私を落ち着ける様に髪を梳いてくれる手に、今はただ甘えた。
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