Chapter5 〜遊戯〜

暫くして。
一番隊隊主室。
そこに揃った隊長格の面々は、一様に不満や不安の色を表していた。
「山爺、最近招集多くないかい?なんか彼女が来てから、凄くばたばたしてる気がするよ」
やる気の無さそうな呑気な声音で、皆の不満を代弁した京楽に、元流斎は重々しく頷いた。
「気がするも何も、彼奴の事じゃからの」
「何か、あったんですか」
意識が戻ってすぐに招集に応じた砕蜂が、不安気な顔で元流斎に問う。
しかし、彼はそれを聞き流して日番谷と朽木へ視線を向けた。
「当人から何か聞いておるか」
「はい。経緯は聞いています」
言葉を返した日番谷と、首を振って肯定を示した朽木。
やはりか、と山本は息を吐いた。
「ならばその事を他言無用とし…」
口止めしようとした元流斎の視線の先で、何かが紫色の光を発した。
気付いた日番谷が、それを取り出して元流斎に渡す。
「これは?」
「彼奴は、通信機と」
山本が眉間に皺を刻むと、ちかりと光る紫紺の石。
『あ、お爺ちゃん、聞こえてる?』
「その呼び方は止めよと言うたじゃろう」
『よし、聞こえてるね。じゃあ懸念事項を先に取り除くよ。私は今、精霊廷内にいる全ての死神の情報は持ってる。けれど、配置とか作戦とかそこまでの情報は探らないから安心してね。後砕蜂、起きたんだ。霊圧は制御出来そう?』
完全に一方的に見えた玲の通信が、指名して黙った為か、他の隊長が皆、砕蜂に視線を向ける。
「は…いや、正直なところ、この霊圧で瞬閧など…」
『うん。じゃあ、制御装置送るね』
その言葉と共に、砕蜂の目の前に空間転移してきた白の腕輪。
『で、お爺ちゃん。どんな設定にするつもりだったの?』
この展開で話を振られた元流斎はぴしりとこめかみに青筋を浮かべた。
「お主のそれで全部終いじゃ!余計な事をしおってからに!」
『まぁまぁそう怒らないでよ。じゃあお爺ちゃんが考えそうな台詞ね。
私は反逆を目論み、脱走しました。未の終刻までに私を捕縛出来なければ、精霊廷を消し飛ばします!
と、こんな感じで良い?因みに捕まえられたら、完成系の潜在霊圧制御装置をプレゼント。魂魄を自動で補強し、意識飛ばさずに潜在霊圧を身体に慣らせる優れものです♪砕蜂と冬獅郎と白哉には霊圧上昇の効果は無いけど。今制御仕切れてない霊圧を制御するのに結構使えるかも』
「脅しより特典の説明の方が長いわい!それともうちと悪ぶって演技出来んのか!」
『無茶言わないでよ。全部今でっち上げたんだから。でも、制御装置は本当だよ?欲しいでしょ?』
「隊長格が物につられて鬼事などする訳無かろう!」
『えぇ〜これ創るのに凄く霊力食うから一個しか創れないのに?本当にそうかな』
石に怒気を向けていた元流斎は、玲の最後の言葉で周りを見た。
一様に、珍しい玩具を見つけて喜んでいる様なキラキラした目で此方を見る隊長格達…(既に力のある日番谷と朽木、砕蜂は例外として)に、山本は深い溜息を零した。
因みに、涅と浮竹は本日欠席だ。
『というわけで。副隊長さん達にはこの特典の事を教えてあげれば士気上がりそうでしょ?
席官以下の隊士さんたちには、さっきの反逆?のお話を真剣に伝えてあげてね。
最後に一つ。今日だけは周りの損害を気にせずに本気で掛かってきていいよ。終わったら全部元に戻してあげるから。死者が出ない様に特殊結界も張ってあるし。これで文句ないでしょう?お爺ちゃん』
「お主…儂直々にとっ捕まえて説教せねばならんようじゃな」
『あら怖い。じゃあ頑張って逃げるね。そろそろ開始だよ』
その言葉を最後に、紫紺の通信石は粒子状に砕け散った。
「…まぁまぁ山爺。良いじゃないの。偶にはゲームで熱くなったってさ」
「護廷隊を動かす以上、そこには責任と矜持が有ろうが」
「あの子に対して矜持なんて持ってもねぇ。砕かれた衝撃で膝付くぐらいなら、最初から持っていかない方が良いと思うけど?」
「…まぁ良い。各自好きに動くが良い。守護配置とて知られて居れば意味は無い。が…誰でも構わん、彼奴を絶対に捕えよ!」
ごうと上がる霊圧をもって背に修羅を顕現させる山本に、乗り気でなかった隊長達もさっと蒼ざめ、返事した。
最早山本の霊圧が殆ど効かない日番谷と朽木は。
…誘き出すか…と、甘味処に向かう銀髪。
茶室ならば静かだろうか、と…安息の地を探す漆黒。
彼女に刀を向ける心の準備が、まだ出来てはいないが故に。
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