Chapter5 〜遊戯〜

遠くで鳴り響く警鐘の音で、私は開始を悟った。
この広大な精霊廷の敷地内を、ただ霊圧を消して逃げ回るだけじゃ、ゲームにすらならない。
何より、つまらない。
「ねぇ天照。私の分身体とか創れたりする?」
―それは見目形が全く同じ人形をという事でしょうか。
「ううん。霊力、思考、記憶…全て同期させたもう一人の私」
−主の知識、知能、戦術を刻んだ創造体に、霊力、記憶、思考回路を同期させるのであれば。
「じゃあ創ってみてくれる?」
―御意に。
少しして。
その屋根の上から五つの影が飛び出した。
騒がしくなった精霊廷を、身を隠す素振りもなく。
「い、居たぞ!反逆者だ!」
―目的捕捉。繰り返す。目的捕捉!
―位置は
―精霊廷南西区画、三四地点!
―目的捕捉!北東区画、二八地点!
―目的捕捉!北西区画、五八地点!
次々に伝えられる目的の位置情報に、統括室は混乱を極めていた。
「…全部で五人…!霊圧反応は瑞稀玲で間違いありません。これは…」
「おやおや。彼女も厄介な事をするねぇ。只の囮人形…だったら嬉しいんだけど」
京楽の言葉を嘲笑うかの様に、五人の玲のうち、二人の霊圧が同時に上昇した。
「まぁ、あの子に限ってそんな訳無いよねぇ」
やれやれと溜息を吐いた京楽は、此処で情報を待っても意味が無いと判断し、外へ出た。
そこへ、すっと一歩後ろに付く女の影。
「七緒ちゃん、鬼事得意?」
「いえ、隊長達を相手に逃げ切れる自信など…」
「いや、鬼の方だよ?」
「それは、追えという指示でしょうか」
「まさかぁ。あの子が加減してくれるとも限らないし、七緒ちゃん一人で行かせる訳には行かないよ」
「彼女、それほど強いのですか?すれ違った事はありますが、それ程強い霊圧は感じませんでしたが」
「まぁ…能ある鷹は爪を隠すってね。じゃなきゃ山爺に啖呵切ったりしないでしょう」
「そう、ですね」
七緒は今でも骨身に沁み付いて離れない元流斎の霊圧を思い出して身震いした。
「まぁ、このゲームで死者は出ないよ」
京楽は七緒を勇気づける様に、隊主会での玲の通信を思い出し、呟いた。
「ゲーム、ですか」
何処と無く肩の力を抜いた七緒に微笑んで、京楽は歩き出した。
派手な羽織を靡かせて。
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