Chapter5 〜遊戯〜

暫くして。
四番隊総合救護詰所。
卯ノ花と勇音は運ばれて来た面々に表情を硬くしていた。
意識を失った斑目と綾瀬川。
同じく傷だらけで昏倒している砕蜂。
血塗れの更木。
大きな裂傷を刻まれた京楽と、気絶している伊勢。
不思議なのは、彼等を例外無く虹色の膜が覆い、どう見ても処置が必要な傷にも関わらず、
「なんだ、お前もやられたのか」
「君だって傷だらけじゃ無いの。にしても、死者は出さないって本気だったんだねぇ、あの子」
ピンピンして呑気に会話をしている事で。
「血が止まってるな」
「まぁ、動こうとすると凄く痛いから、これ以上は無理だけどねぇ」
恐らく致命傷を避けたのだろう傷を見ると、今敵対している彼女が加減している事は考えるまでも無く。
卯ノ花が処置を試みようにも、この虹の膜は回道すらも跳ね返してしまう様で。
「どうしましょう、隊長」
「恐らく延命処置の類のものでしょう。このゲームが終わった後に纏めて治すしか無さそうですね」
やれやれと息を吐く卯ノ花に、へらりと笑った京楽が言葉を発する。
「ん〜多分違うと思うよ?」
「何か分かるのですか」
「あの子は全力で戦って良いと言った。終わったら全部元に戻すともね。それって僕等が負ったこの傷に対しても同じ事をするつもりなんじゃ無いかい?」
「では…精霊邸の破損だけで無く、損害全てに対して責を負うと?そんな事、一人の死神に出来るわけが…」
言い掛けて、卯ノ花は口を噤む。
本当に彼女が只の死神であったなら。
鼻で笑い飛ばされる程の傲慢さだ。
一人の死神が、戦いの全ての責任など取れるはずも無い。
けれど。
彼女は世界が産み出したカケラで。
本来魂魄が持つ成長限界や常識に縛られない存在で。
ならば、可能なのでは無いかと、思ってしまう。
同時にそんな存在を、死神として縛り付けようとしていた自分達の傲慢さに眩暈がして、ふらと卯ノ花は後ずさる。
それを勇音が慌てて支えた。
「まぁ、心配しなくたって彼女は怒ってないよ。寧ろ楽しそうだったよ?」
「…そう、ですか」
卯ノ花は、経緯はどうあれ、彼女の喧嘩を買ってしまった元流斎を密かに恨みながら。
窓から見える空へと遠い視線を向けた。
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