ハロウィンの悪戯
朝起きて隊舎に向かうと、何故か皆そわそわしていた。
不思議に思いながら十番隊隊主室に入ると、突然乱菊が飛びついて来て、腕にカチリと何かを嵌められた。
きょとんと首を傾げていると、
「トリックオアトリート!」
嬉しそうに乱菊が告げる。
滑舌の良悪いそれを聞いて、はっと日付を思い返す。
10月31日。
現世でハロウィンと言われるイベントが執り行われる日。
まさか尸魂界でこんな言葉を聞くとは思わなかった。
お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞの意味の英語。
予想外の事態なのだから、お菓子なんて持ってる訳もなく。
何時もの癖で創造の力を使おうとするも、さっき乱菊に付けられた腕輪が霊力を全て霧散させてしまう事に気付いて。
「えっと…乱菊、何かな、コレ…」
外そうとしても外れないそれに冷や汗を流す。
気のせいか、総ての霊圧を封じられている気がするのだけれど。
「ん〜?技局が開発した玲の霊圧を完全に封じる抑制装置!玲の力抑え続けるのは多分一日ぐらいしか無理だろうって阿近が言ってたけど」
にこにこと説明する乱菊に嫌な予感しかしない。
「えっとね、だから何でこんなの、付けられたのかなって…」
「総隊長が。今日に乗じてお前に日頃の鬱憤でも晴らせだと」
つまり、完全に身体能力だけで死神達から逃げなきゃならないって事なんだろうか。
「ちょっと、酷い!冬獅郎!何それ〜」
「trick or treat」
無情にも、完璧な発音で放たれた言葉に、踵を返して駆け出す。
鬱憤と名の付く悪戯に、今の自分が耐えられる筈が無いのだから。
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