Chapter1 〜淫呪




「別に。俺が気に食わなかっただけだ」

ふいっと顔を背けて呟く彼が可愛らしくて、その場にぽんっとソファーを創造して腰掛ける。


「…グリムジョー。おいで」


素直に近づいてくる彼を隣に座らせて、その体を横たえさせる。

丁度自分の膝に彼の頭がくるように。


「…何のつもりだ」


「別に。今しか心を通わせることが出来ないから。貴方に触れていれば何かわかるかなって」


そう呟いて、固くセットされている髪を撫でる。

感覚としては猛獣を手懐けた気分と相違ないかもしれない。

大人しく撫でられながら、一瞬苦しそうに瞳を細める彼の感情を読み取ろうと、視線を合わせる。


「…お前、俺が怖くねぇのか」


「どうして怖いの?」


吐露された言葉は、彼のコンプレックスなのか、それとも恐れか。

ふっと笑って目を閉じる。


「怖いはずないじゃない。貴方は私の我儘で死神になってまでここに居てくれた、優しい人でしょ?」


そう告げると、ついっと視線を逸らされる。

表情がどことなく恥ずかしがっているように見えて、また可愛いと思う。

こんなにも人を寄せ付けないような顔立ちをしているというのに。

そっと首筋に指を伝わせると、驚いたように見開かれた瞳と目が合う。


「そんなに驚かなくたっていいじゃない?貴方はここを舐めたくせに」


眠る前の行為を思い出してふっと笑うと、グリムジョーが牙を剥く。


「噛み付かれてぇのか」


「あら、自分が猛獣って自覚はあるのね」


「っち…何で俺は此奴に好きにさせてんだ」


ぼやきながらも、顔を背を向けるだけで膝枕はやめないらしい。

瞳を閉じて、彼の心に少しだけ触れる。

けれど、激情に呑まれそうになってすぐに目を開けた。

その心の中には私には理解できない感情が束になって渦巻いていた。

それを少しでも落ち着けようと、私は時間ギリギリまで彼を撫で続けたのだった。


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