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##高校初日

「いってきまーす!!」
写真を撮った後、お母さんたちに手を振って、出発する。

「鉄くんと研磨くん!友香のことよろしくねー」
「はーい!」
お母さんの呼びかけに、クロがブンブン手を振り、研磨も小さく手を上げて答えた。

「友香!!鉄くんと研磨くんの言うことちゃんと聞くのよー」
娘を信用しないとは、失礼な母である。

「ところで、友香チャン、高校デビューですかー?」
家を出てすぐの曲がり角を曲がってすぐ隣から声がした。
クロがニヤニヤしていた。
見なくても分かってたけど、すごく意地悪そうで、イジりたくて仕方なかったですって顔。

「うるさいなー。でも、似合うっしょ?」
「すごくかわいいですよー」
棒読みに果てしなく近い感じの反応でも、「かわいい」と言う単語と、
ぽんぽんと頭に置かれた手に少しほんとにすこーしだけ胸が鳴る。

「はい思ってないー。もう絶対思ってないー。」
「僕はいつも素直です。」
「いや、もう顔が嘘つきだもん。」
「失礼なっ!なんて失礼な後輩なのかしら!!」
あー、ここでもう少し照れながらお礼を言うとか出来たら可愛いのに・・・
とは思いつつ、口から出るのは全然可愛くない言葉たち。。。

「そんな意地悪な先輩がいるバレー部には、研磨あげないぞ!」
「ちょっと巻き込まないで」
研磨の小さな文句は聞こえないことにして、しれっと位置を変わって研磨を真ん中に挟む。

「いいや!研磨は数時間後には立派にバレー部員ですー!」
「なんでよ!まだこちとら入学式なんですけど!?」
「どうせバレー部入るんだから、早いほうがいいだろ。」
「俺挟んで喧嘩するのやめて」
もういいでしょ?とでも言いたげな研磨が間に入ったことで、無事に可愛くないやり取りの上乗せは回避した。

「んで、友香はどうすんの?」
「んー、今んとこ帰宅部かなー」
「えー!もったいねーな。うちにもあるぞ?バレー部。」
中学までは2人にならってバレー部に入っていたし、楽しかったけど、
どちらかと言うと見る方が好きだし、もう3年毎日頑張るほどのモチベーションは今のとこない。

「別にやりたいことないんだよねー。
バイトしてもいいし、友達と遊んだりしたいしー、・・・彼氏とか出来るかもじゃん?」
出来れば、それはクロが良いんですが、とはもちろん言えず・・・。
「カレシ!?」
さっきよりも大きな声の反応にチラッとクロの方を見上げれば、
手で口を抑えて、首を横に振って、『信じられない』とでも言いたげだった。

「何その反応・・・。」
「早いって!まだ早いって!!なぁ、研磨!?」
「知らない」
「早いって、、、お兄さん、もう私高校生よ?」
「今日からね!!!」
「いや、だからもう高校生じゃん?」
そう返すと、「そうだけど・・・」とブツブツ呟いててもう聞き取れない。

「よし!分かった!」
「なに?」
「バレー部のマネージャーやれよ!」
「今何がどうなったら、そんな話になった?」
2、3分前の私が帰宅部を希望していることは忘れ去られたのか、
謎の提案が出てきた。

「うちは今マネージャーがいねー。」
「・・・だからどうした」
私に1mmもメリットのない理由でさらに意味が分からない。

「知らないよ。それに、今年私以外の誰かが入るかもしれないじゃん。」
「いや、そうかもしれないけど、あとは、研磨がいる。」
「・・・で?」
(何度も言うが)高校生なんだから、離れたとてお互い困ったりはしない。

「いや、だからあれだって!心配なんだって!」
「なにを?」
「・・・非行に走ったりしないか、とか?」
「ぶっ」
もうすぐ学校に着くからか、ゲームを片付け始めた研磨がクロの「非行」発言に吹き出した。
でも、私の中ではプチンと切れた音がした。

「はぁ!?なにそれ!私のことなんだと思ってんの!?」
「いや、違くて、な、研磨?」
高い身長が少し低く見えるぐらい、急にヘナヘナに折れ始めたクロは研磨の腕をブンブン揺さぶっていた。

「今研磨関係ないでしょ!もう私行くから!!」
きっとアニメとかだったら、「フンっ」って効果音が付きそうな勢いで、
私は自分のクラスを知るために2人のそばを離れた。
1人になってからすぐに「やってしまった・・・」と言う後悔が湧いて、入学1日目ですでにもう泣きそう。


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「もう私行くから!!」
「あ、ちょ、友香ー」
名前は呼んだが、振り返ることもせずに、可愛い幼馴染は行ってしまった。

「余計なこと言うから。」
もう1人の幼馴染は横で、フォローすることもなく辛辣な一言をあびせてくる。
自分も笑ったくせに、と喉まで出たが、反論する気力よりダメージの方が少しでかい。

「あんなん彼氏なんか作ろうと思ったら、簡単に出来ちまうだろ。」
「本人に言えば。」
そんな簡単に口に出せるなら、どんなに楽なことか・・・。

友香を初めて会ったのは、引っ越してすぐ研磨の部屋でゲームしてた時。
笑顔は可愛いし、コロコロ表情は変わってて飽きないしで、どんな女の子よりも眩しく見えた。
今思えば、ガキのくせして完全に一目惚れ。

それからずっと近くにはいる。
近くにはいるだけで、特に何も進展はなし。
むしろ、『彼氏が出来たらー』なんて言い出すぐらいだから、多分何とも思ってない。

「あー、なんで、あんなこと言っちまったんだろー。くそやっちまったー。」
「めんどくさ」
玄関から出てきた友香は、今までよりも可愛さがアップしていて、少し目を合わせられなかった。
1年見慣れたはずの他の女子達と同じ制服を着ていたはずなのに、似合っているように見えたし、
髪を少しくるっと巻いて、少しメイクアップしただけで女の子はこんなに変わるのかと、頭を抱えたくなった。

「なんで友香にマネージャーさせたいの?」
「そりゃ、少しでも近くに置いときたいだろ。
あんな可愛い子が練習中も、試合中も『頑張って❤︎』って応援してくれんだぞ?やる気出るだろ?」
「え、だれそれ。」
いや、確かに今までも試合を見てくれたことはあったが、そんな感じに言ってくれたことはない。
研磨の冷めた目が、少し脳内の誇張された友香を現実に戻した。

「変な奴が近くに寄ってこないか、心配なんでしょ?」
「そうそう」
「近くにいたら邪魔も出来るしね。」
「そうそう、、あっ」
「クロさいてー」
違くはない。この鋭い観察眼の幼馴染には全て見透かされている訳で。

「友香に無理にはやらせないよ。」
「協力してくれんの?」
「別に。そのままいじけられる方が鬱陶しいし。
知ってる人いる方が俺もいいし・・・」
きっと後者が本音なんだろうが、この際なんだっていい。

「でも、さっき怒ってたから意地でも入らねーって言いそう」
「友香の扱い方ぐらい知ってる。」
「おっ!さすが頼もしー」
一瞬ギロっと睨まれたが、友香がマネージャーしてくれる未来があるなら、怖くはない。

「じゃ、友香が入部したら来週発売のゲームよろしく」
「・・・ん?心優しく幼馴染の協力してくれるんじゃねーの?」
「そんなこと言ってないけど。じゃ、俺も行くから」
サラッと恐ろしい契約を交わして、研磨も友香が歩いて行った方に向かっていた。
それを見送って、財布の心配と共に俺も自分のクラスを確かめることにした。

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