02
##距離
「初日からそんなに落ちてどしたー?」
一旦朝の悲惨な結果は頭の片隅に追いやって、
入学式やらオリエンテーションが終わり、高校初日はもう終わった。
集中が切れたことにより、頭の中はまたしても今朝のことでいっぱい。
机に倒れ込んでると、上から声がした。
「あ、さーちゃん、また同じクラスだねー。よろしくー」
「はい、よろしく。」
ラッキーなことに中学からの親友が同じクラスだった。
今日、唯一良かったと言っても過言ではないかもしれない。
「んで、今日は何やったの?
どうせ『クロ』さん関係でしょ?」
「それが「そんなに落ち込むなら逃げなきゃ良かったのに。」
「研磨!!」
さーちゃんに今朝の出来事を説明しようとしたときに、どうやら帰る気満々の研磨がやってきた。
それを見たさーちゃんは早々に私の激落理由に興味を失ったらしく「孤爪交代。」と言って去っていった。
「逃げてないもん。クロが悪いもん。」
「今回はね。でも友香後悔してる。」
「うっ」
私の恐ろしい観察眼を持つ従兄弟は、容赦無く痛いところをいつも突いてくる。
「ねぇ、クロ怒ってた?なんか言ってた?幻滅してなかった?」
「さぁね。自分で聞けば。」
「もー何しに来たのー?励ましてくれたりとかないの?」
「俺に求めないで。」
うん、それはそう。少しでも期待した自分がアホだった。
研磨にはサクッと私の気持ちは見透かされている。
だからと言って、協力とかは基本ない。というか、多分そんなことはしないし、出来ない。
「マネージャーやらないの?」
「なに、クロに頼まれたの?」
「別に。」
なんだ、クロに勧誘頼まれただけか。
勧誘頼んでくるぐらいなら、少なくとも幻滅の線は消えたと言えよう。
「友香、クロのバレーしてるとこ見るの好きなのに、なんでやらないの?」
「だって、、、そんなの、、バレちゃうじゃん。」
「は?」
「だから!そんな近くにいたら絶対いつかバレちゃうもん!!
クロって相手がどう思ってるかー?とか微妙に勘良いじゃん?
私の気持ちにマネージャーなんてやったら、絶対目で追っちゃうもん。
そしたらバレて、距離をすーって置かれて疎遠だよ?」
ちらっと見えた研磨の顔には『こいつは何を言ってるんだ』と書いてあったが、口から出てきたのは大きなため息だけだった。
「それってクロの頼み断ってまで優先させることなの?」
「・・・研磨さん、もう少し思いやりとか持てない?」
本当にエグいぐらいのド正論で、もう涙も出てこない。
「だから俺に求めないで。
クロもさすがに友香が不良になるとは思ってないでしょ。」
「どーですかねー」
「拗ねない」
分かってるし、
本当にそう思われてたら、それはそれで結構ダメージ大なんですけど。
「別に今日決めなきゃいけない訳でもないでしょ。」
「そーだけどさー」
「でも、ウダウダ悩んでると、取られちゃうかもよ?」
「へ?」
研磨が指さす方を見ると、ジャージを着たクロが女の子たち数人と楽しそうに話してるのが見えた。
当たり前だけど、クロは私たちの1つ上だから、すでに1年この学校で過ごしている訳で。
「マネージャーもクロの近くにいる人も友香じゃなくなるかもよ。」
「・・・よく喋るね、今日。何で釣られてんの?」
「話逸らすならもう知らない。俺もう行くから。」
「・・私も帰る。」
もう一度窓の外を見ると、もうクロの姿はなかった。
研磨が余計なこと言うから、少し真面目にマネージャー考えようという気持ちになってしまった。
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「はっ!騙された!!」
「騙してないよ」
ぐるぐる考えながら研磨の半歩後ろを歩いていた。
気が付くと目の前には体育館。中からはバレー部の声や音がしていた。
「帰るって言ったじゃん!」
「言ってないけど」
・・・確かに。
思い返すと、『もう行くから』としか、彼は言っていない。。。
「勝手に着いてきたのも友香じゃん」
項垂れている私にゲームで勝った時と同じ顔をして、追い討ちをかける研磨。
「えぇー、言ってよぉー。」
「聞かれてない」
「そうだけどさー、私か「あれ?1年生?見学?」
帰ろうと思ったら、後ろから優しそうな人に声をかけられた。
「はい。あ、でも私は「あ!海!あれじゃね?」
今度は隣にいた小柄な人に遮られてしまった。
お願い、私はクロに会う前に帰りたいの!!
「あぁ、そういえば。幼馴染が来るかもって言ってたな。
じゃー君ら黒尾の幼馴染?」
優しそうな人の問いに研磨がコクンと小さく頷いた。
「女の子の方も来るとは思ってなかったけどな。
ちょっと待ってろ!今呼んできてやるよ!!」
「あ!ちが、ちょ」
足も判断も早いんだよ!運動部!!!
まだ私何も言えてないし、1年生でクロの幼馴染だけど、肝心の見学しに来たわけではないというところは聞いてもらえず・・・
「ごめん、まだ名前言ってなかったね。俺、海 信行。
あっちが夜久 衛輔。黒尾と同じ2年だよ。よろしくね。」
「あ、三毛 友香です。あ、こっちが孤爪 研磨です!
よろしくお願いします!!」
慌てて名前を言って、ペコとおじぎした。
海さんは、ニコニコしてて、安心感がある人だなと思った。
「お!来たか!!研磨と、、え、友香?」
自己紹介してたところに、本人が来てしまった。。。
さっき窓から見えてたジャージは着ていない、トレーニングウェアのクロ。
今朝の流れから絶対に来ないと思っていたであろう私の姿を見て、クロが驚いている。
「あ、いや、研磨に連れてこられたというか、、」
「勝手に着いてきたんじゃん。今日見学してもいい?」
「あー、うん。友香も見てくか?」
「いや、、、」
クロも研磨も私の言葉を待つように、こちらを見ている。
『私は帰るよ』と言いかけた時に、窓から見えたクロの談笑している姿が過ぎる。
ここで帰ったらまた逃げたように見えちゃうんじゃないか?
さっきの研磨の『そこまで優先させることなの?』という言葉が頭の中で響いた。
「わ、私も。み、見てってもいい、かな?」
朝もう『高校生だもん』とか言っておきながら、情けないことに研磨の袖を握りながらじゃないと、本音は絞り出せなかった。
ちらっとクロの顔を見ると、少し驚いたような顔をして、すぐに笑顔になった。
「おう!先輩たちには俺が言っといてやるよ!」
「え、女バレは今日こっちじゃねーぞ?」
「ふふん!夜久くん、友香はマネージャーやるから見学はここで良いんですよ。」
「なんでクロがドヤるの」
ほんとそれ。研磨のツッコミに心の中で共感。
朝あんなに勧誘下手くそだったくせに。
あ、ちょっと思い出してムカついてきた。
「マジかよ!!え、やってくれんの?」
「あ、いや、まだ考え始めたばっかりで」
「なんだよ、黒尾が勝手に決めてるだけかよ。」
「文句ですかー?文句なら候補の1人でも連れてきてから言ってもらえますかー?」
「うるせーな!」
睨み合う2人に『まぁまぁ』と割って入る海さん。
わずか数分でなんとなく関係性は見えた気がする。
「良かったら前向きに考えて。俺は入ってくれたら嬉しいよ」
「はい!ありがとうございます!」
優しく微笑んでくれる海さんに、お礼を伝えて今日2度目のペコとおじぎで返した。
やっぱり良い人だなー。
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