03
##視線
主将に、研磨と友香が見学することの許可をもらって、2人を中に案内した。
慣れない場所に来た時、友香の方がオロオロしていることが多い。
しかも、うちの部にとっても、練習を見学しにくる女子が珍しいからか先輩達もチラチラと友香の方を見ていて、
視線を感じているからか、余計に友香が戸惑っているのが分かる。
それでも、声をかけ続ける海と夜久に、友香は時折笑顔を返していた。
「どうやって連れて来た?」
「だから勝手に付いて来ただけ。」
「マネージャー本当にやってくれねーかな。」
「それはクロの頑張り次第じゃない?」
どういう意味かを聞き返そうとしたが、残念ながら集合がかかってしまって聞けなかった。
少し友香の方を見ると、海と夜久に小さく手を振り、声をかけて送り出していた。
あー、くそ。俺も応援して欲しかった。というか、今のとこ友香の入部に一番貢献していないのは俺じゃね?
「んじゃ、今日は早めに一通りのメニュー終わらせて、対戦形式を多めにやるから。」
「お前があのマネージャー志望の子に良いとこ見せたいだけじゃん。」
「そりゃそーだろ。」
「あの子なら、梟谷グループのマネ達にも充分張り合えるな。」
「また違った系統の良さだよなー。」
友香に聞こえてはいないようにか、少しボリュームは下げられている。
発端は自分なのだが、本当にここに連れて来て良かったんだろうか。
友香が値踏みされているような感覚で、少し嫌な気持ちになってくる。
とはいえ、友香に良いところ見せたいのも、マネージャーになってほしいのも、それは自分もこの人たちと同じな訳で。
「でも、男連れじゃん。」
「あれ、従兄弟なんだろ?」
「え、あ、はい。」
思わず振られた、返事だけをした。
『じゃー問題ねぇよ』なんて笑ってる先輩達から目を背けたくなる。
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集合がかかった3人を見送って、研磨と2人で指定された体育館の隅に2人で立って待つことにした。
挨拶した後も何か話しているようだけど、私たちの方まで声は聞こえない。
「あ、こっち見た。
あの2人カップルかなーって話してるんだろうね、多分」
しばらくそっちを見てると、チラチラと視線を感じた。
研磨はどうでもいいとでも言いたげな表情をしている。
「あ、やっとはじ「すんません!見学させてください!!」
集まっていた部員達が解散しかけた時に、モヒカンの男の子が体育館に飛び込んできた。
「おぉ、そこにもいるから、一緒にいて。」
「ありがとうございますっ!!」
3年生の人の指示に、モヒカンくんは勢いよく頭を下げた。
「どうもー。」
「な、な、な、な、なん、え?なん」
モヒカンくんは目があった瞬間にパニックに陥ってしまったようで、
単語すら成り立っていないが、なんとなく聞きたいことはわかった。
「私1年の三毛 友香、こっちは従兄弟で同い年の孤爪 研磨。
それで私はマネージャーを考えてて、私たちも見学してるから、良かったらお隣どうぞ。
質問は?」
「な、「ありがとう」
「「えっ!?」」
モヒカンくんに促したはずの私の隣にはすーっと違う人がいた。
「見学。田楽。」
やばい、わからん。
もう聞きたいことが渋滞しすぎていて、何から聞いたらいい?
「ふっ」
頭の中が?に支配され始めた時、反対側の隣にいた研磨の笑い声がした。
え?嘘でしょ?これ面白いの?
とりあえず名前だけ聞いて、
研磨、私、福永くん、山本くんの順で並んで見学を続けることにした。
見学して、まず一番の感想は、迫力がやばいなと思った。
男子で、高校生ともなると、パワーが段違いに感じる。
スパイクなんて、もはや腕もげそうだったし、ちょっと恐怖を感じた。
そしてやっぱり、少し気を抜くと目で追っているのはクロだった。
いや、デカいし、あの頭だし、バレーも上手いしと心の中で精一杯の言い訳をした。
特にプレーが決まったときの嬉しそうな顔がやっぱり好きだなーとぼんやり思っては、かき消してを繰り返した。
こんなことではやはり気付かれるのに時間の問題でしかない。
少しでも気を散らすために、自分がマネージャーとして入った時のことを考えることにした。
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「黒尾、1本ナイサー」
自分がサーブをするとき、少し冷静になろうと努める。
でも、振り向いていざサーブをする時に、ちらっと視界に入る友香(と研磨といつの間にか増えた2人)。
感じる視線に良いところを見せたい気持ちが出て来てしまい、少し力が入る。
「アウトー」
そしてミスる。うん、ダセェ。
「どんまい、どんまい」
と流れ作業のような励ましを聞きながら、ちらっと友香に目を向けると、もう別のところを見てる。
休憩中も友香の視線はキョロキョロしていて、忙しそうだった。
多分、自分が入ったときに、どう動くかをシミュレーションしてるんだろう。
今朝まで頭の中になかったはずなのに、やっぱ基本真面目だし、良い子なんだよなぁ。
「・・・穴開くぞ。」
「は?」
飲み物を飲んでると、隣から夜久に声をかけられた。
「見過ぎって言ってんだよ。」
「マジ?」
「「まじ」」
2人からは即答だった。
完全に無意識だったが、言われれば今頭の中は完全に友香に占拠されていた気がする。
「お前だいぶ分かりやすいな」
「うっ!」
「それでサーブミスはちょっといただけないな。」
「ぐっ!」
「ダセェな!」
全く容赦ない2人からの攻撃にこっちのライフはもう0になりそうだった。
「あの子、あんまお前のこと見てねぇし、気にすんなよ!」
「え、励ましてんの?嫌味なの?」
すごいもう顔面ぶん殴られてる気分。
意識されていないことは充分理解していても、それはそれで悲しい訳で。
「まぁまぁ。そろそろ休憩終わるよ。
1つ言うなら、俺は変に力むより、いつも通りの方が良いと思うよ。」
「ガンバリマス。」
練習に戻る前に一瞬だけと思って、友香の方を目を向けると、目がやっと合った。
友香はビクッとすると、少し微笑みながら、小さく手を振っている。
それだけで、疲れた体とか、サーブミスったことがリセットされるような気持ちになるから、男は単純だ。
あぁ、やっぱ友香マネージャーに勧誘しよう。
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