夏合宿4日目

合宿も半分を折り返した4日目。
昼間の暑さと、日々の疲れが溜まってきた今日。
彼らはバクバクと夕飯をかき込んでいるが、正直そこまでの食欲もない。

「友香ー。ちゃんと食べたかー?」
何とか食べ終わって片付けに立ち上がって、すぐにクロに声をかけられた。

「食べたよ。お皿空でしょ?」
「・・・梟谷のマネちゃんのお皿におかずが二つあるのはなーんで?」
全てお見通しですよ。とでも言いたげなクロの表情。
雪絵さーん!何ですぐ食べてくんないんだー!

「別に全部あげた訳じゃないし・・・」
「お前そういうとこ研磨にそっくりな。」
ぽんぽんと頭を叩かれた部分と頬に少し熱が集まる。
そして、マネージャーたちのテーブルからも少しニヤニヤした視線も感じる。
今日の女子会のネタ決定ですね、これは。

「何か用事だった?」
「あぁーそうそう。今日さ、夜のミーティング一緒に出てくんない?」
夜のミーティングとは多分毎晩やっている主将と副主将が集まっているやつのことだろう。

「何で?海くん何かあったの?」
「いや何もないけど、海はさ、ほら下の奴らの見張させようかなと。
その代理として友香連れて行こうかと思って。」
「え、なにそれ。そんなに保護者いるの?」
「残念ながら。昨日そっちの部屋乗り込もうとした奴らもいるしな。」
あぁ、なるほど。
昨晩、烏野の田中くん、西谷と虎、巻き添い食らった犬岡の4人がマネ部屋に来て、
潔子さんたち3年達に追い返されるというプチ事件があった。
そのため、監視体制が強化したいということであれば、分からなくはない。

そうなると、
研磨は論外として、
虎、福ちゃん、私だとしたら、自分でも多分私を選ぶな。うん。

「分かったけど、それほんとに私も行って大丈夫なやつ?」
「別に隠すようなこと話してる訳でもないし、大丈夫だろ。
じゃー21時ぐらいに階段とこ来て。
あ、風呂入ってからでいいから。」
「?あーうん、分かった。」
そんなに長いの打ち合わせ?とは少し思ったが、
まぁ1人で行く訳じゃないし。

お風呂に入ってから、
少し女子部屋で揶揄われていると、あっという間に約束の時間になった。

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「友香!」
待ち合わせ場所に来ると、きちんと筆記用具を持った友香がいた。
声をかけると、友香は少しだけ応えるように手をあげた。

伝えた通り風呂にすでに入ったようで、Tシャツにショートパンツのラフな姿で、まとめられている髪は少し湿っていた。
シャンプーの香りがして、視覚的にも嗅覚的にも毒だった。

「わざわざ悪いな。」
「そう思うなら、お宅の後輩ちゃんと躾けてもらえますかー?」
「後輩に優秀なマネージャーがいてくれて、主将はとても助かるなー。」
「ちが、私の話してないじゃん。」
バシバシと叩いてくる腕は痛くなく、ただ可愛いとしか思えない。
それに、暗い廊下では見えないが、多分今は耳まで真っ赤になっている。

「お待たせしやしたー」
「・・どうも?」
教室の中に入ると、木兎と赤葦以外は揃っていた。

「あれ?音駒のマネちゃん!」
俺の後ろから顔を覗かせる友香を見て、スガちゃんが反応を示した。

「感謝しろよー?むさくるしい夜に、うちの華を連れてきてやったぞー」
「え、ちょ、バカじゃないの!?入りにくい!!」
後ろにいた友香が背中をバシバシ叩いてくる。

「そりゃありがてぇー」
「いや!違いますよ!!?代わりです!
海くん、、副主将の代わりなだけなんで!!」
拝むスガちゃんを見て、慌てて友香が否定している。
ここが男だけのむさ苦しい空間であることも、友香がうちの華であることも嘘ではないのだけども。

「無理やり連れてこられて可哀想に。」
「代理・・・いるか?」
「え?」
「だいちー、それを言ってやるな。」
「いらないんですか?」
スガちゃんが、友香を中に連れて行ったかと思うと、
サームラさんと3人で俺の方をチラチラ見ながら話している。

「別にそんな大層な話ないよ?」
「マネージャー達だって疲れてるだろうに。」
「あれが主将だと・・なぁ?」
「・・・そうなんですよ。」
「「ブハッ!!」」
2人の会話から空気を読んだ友香は烏側サイドにつくことにしたらしい。
友香の切り返しに、烏野の2人が笑い転げている。

「何でそっち行っちゃうかねー。」
「いいわー、三毛さん!もう宮城に連れて帰っちゃうかー?」
「それいいな、歓迎するよ。」
「マネージャー経験者なんで、即戦力になれます!」
「採用です。」
「あざーす!!」
「こら!友香!」
流されたついでに勧誘を受けて、なぜか積極的に入ろうとしている友香の手を引いて、慌てて2人から引き離す。

「お前はうちの華だって、さっき言ったばっかでしょうが。」
「えぇー、烏野には谷ちゃんも潔子さんもいるんだよ?楽しそう。」
「だからこそ必要ないでしょーが!」
「うちはいつでも歓迎するからぁー」
スガちゃんの余計な一言に笑顔でヒラヒラと手を振る友香からは、部屋入った時の緊張したような顔は消えていた。

「おっつー!!」
「すみません、皆さん。遅れまし、」
未だに落ち着かない顔をした友香を宥めながら、隣に座らせてすぐに、木兎と赤葦が教室に入ってきた。
赤葦はすぐに友香に気づいたようで、固まっている。

「あれー音駒のマネちゃんじゃん!!どーした?」
「海の代理だ。お前待ってる間にこのクダリ終わってんだよ。」
「へー。」
多分何も考えてない木兎は納得、赤葦は何か言いたげだが、遅刻した手前、先に進めることを優先したのか諦めたらしい。

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「〜〜〜決して無理させないように、とのことです。」
赤葦が昨日と同じような内容のメモを読み上げ、友香は聞いた内容を真面目にメモを取っている。
読み上げ終わった赤葦はメモを小さく折りたたみながら『以上です』と告げた。

「じゃ、ミーティングは終わりっつーことで。」
「お疲れ」
数分で終わったミーティングに、友香は『あれ?』という表情を見せ、
昨日はすぐに帰った生川組と森然組はすぐに立ち上がった。

「いや、待て!俺は今日はお前らとも戦うぞ!」
「は?」
「これだ!!」
なぜかドヤ顔の木兎が取り出したのはトランプ。

友香は俺の狙いに気づいたらしく、「あ!」と声をあげた。
「クロ、もしかして・・」
「良いだろ、別に。友香も好きだろ?」
「好きだけど、巻き込まないでよ!」
場の空気を壊さないためか、袖を掴みながら小さい声で訴えてくる。
友香は研磨の従兄弟なだけあって、こういうトランプなどのゲームが超得意。
そのために今日は連れてきた。

「少し付き合ってくれれば良いって!ほら、アイス奢ってやるから。」
「むー。勝ったら追加でパフェ奢ってくれるならやる。」
少しむくれる顔が可愛い。
パフェぐらい、いつでも連れてってやるのに。とは思うが口からは出ない。
「じゃーそれで。」
契約が無事に締結した。

何も聞かされていなかった生川組・森然組は、この後に予定を入れてしまったということで、
昨晩のババ抜きからメンツは海が友香に変わっただけだった。

「昨日はババ抜きいっぱいやったから、今日は違うの!赤葦考えて!」
「えぇ、、では、七並べで。」
「おぅ!良いじゃん!良いじゃん!!」
昨日のババ抜きに飽きたらしい木兎からの無茶振りで、七並べになった。

「別に無理して付き合わなくていいよ?」
周りに合わせて、せっせと準備している友香に赤葦が声をかける。

「ありがと。でも大丈夫だよ。私トランプ結構好きなの。」
「強いの?」
「どうだろー。
あ、でも、同じ学年同士仲良くしようね?」
「・・・駆け引き始まってる?」
「どうでしょう」
警戒する赤葦に、笑みを浮かべて返す友香の顔がどこか研磨に似ていて、
2人に血の繋がりを感じた。

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「あーがり!」
友香が嬉々として、最後の1枚のハートのクイーンを置いた。

「いや、友香以外全員もう持ってないから」
初戦、見事に全員ボロ負け。
友香以外、パスを使い切り脱落。
最後は空いたパズルのように空いた箇所を埋めていく作業のような友香のターンを眺めるだけだった。

「嘘だろ・・・」
「あのクイーンさえ出てくれれば!!!」
あまりの負けっぷりに言葉が出てこない烏野主将と、
ハートのキングが出せずに詰んだ烏野副主将が嘆いている。

「あぁーもう1回だ!今のはカードが悪い!!マグレだ!!次だ次ぃ!!」
最下位でボロ負けした木兎は、カードのせいにしているが、それこそ勘違いだ。
どちらかというと、友香のカードは端のものばっかりだった訳で。

「わーい!パフェ1コゲット〜。どこにしよっかなー」
隣の友香は勝ったことで、機嫌が良さそうで、
さっき約束したパフェにするかで、頭がいっぱいなようで、すでに目の前の嘆く男達はどうでも良いらしい。

「ん?1?え、次勝ったら2になんの?」
「え?そりゃそーでしょ。『勝ったら』って言ったじゃん」
「1回でも勝ったら、じゃないの?」
「誰もそんなこと言ってない。」
確かに言ってないし、決めてなかった。
イタズラっ子のような顔で笑う友香は完全に確信犯の顔だった。

「ほら、配って。木兎さんが2回戦目を求めてるよ。」
1回やったことで、自信を持ったのか、2個目のパフェ獲得を目論む友香が催促しているのが可愛くて、
財布へのダメージはあるが、もう負けても良いかーという気持ちになってくる。

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「あーがりでーす。」
3回目の今、またしても勝ったのは友香だった。
まさに完封勝利の圧勝。

「やっぱお前らグルなのか!?」
「お前が言うから、今回友香は残りもん選んだんだろうが。手品じゃねぇんだよ。」
「そ、そうか・・?」
2回戦でもボロ負けした木兎が、カードを配る俺と友香が手を組んでることを警戒して、
3回戦は全員が手札を選んだ後に、友香が最後に取ることになったが、当然手を組んでいないため、結果は変わらず。

「なぜ勝てないんだ・・・」
「3回連続で一人勝ち・・・」
「黒尾、お前はなんて厄介な子を連れてきたんだ・・・」
「スガちゃん、それ褒めてんの?」
「すみません、パフェがかかってるもので。」
友香の圧勝ぶりに、全員が項垂れている。
いっそ、俺らが弱すぎるのかもしれない。

「よし!次ババ抜きにしようぜ!」
「ババ抜きは飽きたんじゃなかったのかー?」
「いや、7並べの方が飽きた!!」
負け続けているからか、飽きた木兎がババ抜きに変更を提案してきた。

「そうだな。。まだババ抜きの方が勝てそうな気がする。。。」
顔を伏せているスガちゃんには見えていないが、友香は余裕そうな笑みを浮かべている。

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「はい、どうぞ。」
「ま、まさか。。。」
「これで上りです。早く引いてください?」
友香の手に残るのカードは1枚のみ。
それをスガちゃんが引き取れば、またしても友香は1位な訳で。

「はっ!?嘘!!え、え?」
「まだあと4人いますから。頑張って。」
何ターンか前に友香に渡したジョーカーはたった今スガちゃんの手元に渡ったらしい。
ずっと、友香は涼しい顔して、他の人がババを持っているように会話に参加していた。
自分が友香に渡したはずなのに、2ターン後には「意外とみなさん顔に出ないんですねー」なんて言ってたから、まさかまだ持ってるとは俺も思っていなかった。

1位が決まった以降、あとは消化試合とでも言わんばかりのスピード感で進んでいった。
その後2回やったが、どちらも友香が順調に勝っていった。

「強すぎる・・・
もう俺には無理だ・・・」
勝てないことに、木兎がしょぼくれ始めた。

「分かりました。
木兎さん、ちょっとあっちで休んでてください。」
「あかあしー!もう少し構って!!」
「三毛さん、次は大富豪にしよう。」
練習中、試合中であれば、立て直しを図るであろう赤葦だが、今はただの遊びの時間。
木兎に大富豪は無理だと思ったのか、無視することにしたらしい。

「急にどした?」
「三毛さんとやったら、面白い勝負が出来そうだと思って。」
「ふふん。良いでしょう。受けてたとう」
今いるメンバーでは2人きりの2年たちが怪しい笑みを浮かべながら、睨み合っていた。

「・・・ちゃんと後輩だったか。」
「ん?」
俺らが勝つ可能性とか考えないのかな、とかを思いながら火花を散らしあう2人を見ていると、
隣でスガちゃんがポツリとつぶやいた。

「いや、いつも特にしっかりしてる2人に見えるからさ。
なんかちゃんと後輩っぽく見えて安心した。」
「確かにな。俺ら普段の様子とか知らないしな。」
バレー部でいるときの友香は、確かに少しだけ大人になる。
きっとそれは友香の癖のようなもので、
周りをよく見て、バランスを考えて、立ち回りを考えているからだと思う。

「よし!」
閃いた!って顔をしたスガちゃんが慌てて携帯を取り出したと思ったら、電話をかけ始めた。

「あれ、放っといていいの?」
「もう遅い。多分少ししたら、誰か2年が来る」
もう一度スガちゃんを見ると、「待ってるー」って言って、電話を切っていた。
宣言通り、すぐに烏野からは縁下が教室に飛び込んできた。

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「革命をぶっ込んでからのさよなら」
「わかる。あるね、それ。」
「やっぱり都落ちさせてからの逆転劇は外せない」
「それが結局のとこ一番の革命だ。」
事情を聞かされた烏野の2年くんは、すぐに逃げられない空気を察したようで、
友香たちと一緒にルールを決めている。

「あれ、ルール決めてんだよな?」
「まぁ、一応。」
「何かずっとどうやって勝つかの話してね?」
「しかも全部地味に性格悪いな。」
そしてなぜか3人とも自分が勝つことを前提に話しているのが少し面白い。
火花が散っているが、3人ともとりあえず楽しそうではある。

ちゃんと話し合った割に、ルールは意外とシンプルだった。
戻ってきた友香は、「私勝ちに行くから」と宣言していた。

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「お、俺上り。」
1回戦目上がったのは、2年の誰でもなくサームラくんだった。

「え、俺ももうあと1枚なんだけど・・・」
俺の手元にも、すぐに上がれる1枚しかない。
結果、上から澤村、俺、スガ、縁下、友香、赤葦の順でゲームが終了し、予想外の展開に戸惑う。

「まぁ、初戦はね。」
「先輩方に花を持たせないと。」
「そうです。気にしないでください。」
それを爽やかな笑顔で言ってくれたら、信用できたかもしれないが、
目で火花を散らし合っている3人に言われても全く信用ならない。

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2ゲーム目に入り、ゲーム展開が激変した。
1ゲーム目は全員かなり手を抜いていたらしい。
というか、多分3人ともがいかに気持ちいい勝ち方をするかにこだわっているように見える。

「縁下くん、早く革命しちゃいなよ。4枚も邪魔でしょ?」
「何で、俺だと思うの?赤葦はそのままだとまた大貧民になるよ。」
「心配ありがとう。策士策に溺れるってことわざあるよね?三毛さん」
「・・・こっわ。」
1ゲーム目は無言が多かった3人だが、今回は口数が多い。
お互いに煽り合っていて、別に何も賭けたりしていないはずなのに、なぜこんなにバチバチしているのか。

「え、なに縁下、お前革命起こす予定あんの?」
「ないですよ。あんなに持ってるから赤葦がやりかねないですけど。」
「そんなこと言われたら、俺カード出せなくなるなー。」
「大富豪なんですから、躊躇わずにどうぞ?」
「友香はなに企んでんの?」
「何も企んでないけど。」
軽い気持ちで始めた大富豪が思わぬ形で緊迫したゲームになってきた。
日和始める俺らには構わず、2年ズが攻防戦を繰り広げている。

結果、俺、友香、縁下、赤葦、スガ、澤村となった。
「お前、この中でよく大富豪になれたな。」
「なって良かったのかは分からんけどな。」
「ライアーゲームやってる気分だったわ。
やっぱ縁下連れてきて正解だったなー!」
正解か?すげー緊迫した顔してんだけど。
隣の友香も、赤葦もこれから、鬼気迫る表情で、これ何してんだっけ?とむしろこっちが冷静になってくる。

「勝ったらどうする?」
「「「は?」」」
ラスト1ゲームっていうこのタイミングで今更ぶっこむのこの子たち?

「大富豪と富豪の言うことを聞くとかは?」
「それいいね。」
「じゃ、決まりでー」
「ちょーっと待てぇ!!」
「え?どうした?」
静止する俺に、友香が何でもないような顔で見上げてくる。

「『え?どうした?』じゃねーよ!」
「なにしれっと負けイベ作ってんだよ。」
「え?俺らでルール決めていいって言ったじゃないですか。」
「言ったよ!言ったけど!!まさかこのタイミングで追加ルール来ると思ってねぇよ!!」
「しかも何だよ、そのルール!大富豪と富豪以外は実質負けじゃねーか!!」
「大富豪か富豪になれば?」
「ここで抜けます?」
反論する俺たちを嘲笑うかのように、軽くあしらっていく可愛く無くなってきた『ねー』と共感し合う後輩3人。
ここで抜けたら、余計にチキったように見える。と言うか、威厳がなくなる。

「3人か、つまんないねー。」
「大富豪やるにはちょっと人数不足かもね。」
「せっかく盛り上がってきたのにね。。。」
急にテンションが下がっていく3人に、ちょっと心が痛んできた。

「や、やるよ。」
「俺もやるから、俺らも一緒にやるから!な!?」
「ちょっと追加の罰ゲームにビビっただけだって!」
「はい、じゃあクロよろしくー。」
あれ?やっぱり俺ら嵌められてね?とは思ったけど、もう言い出せる感じではなかった。

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結果、
大富豪は友香で富豪は縁下になった。
赤葦、スガ、澤村、俺の順位となり、無事後輩たちにボコボコにされた。

「じゃ、罰ゲーム考えよっか。」
「赤葦もこっち側でいいよね。」
大富豪様と、富豪様の命により、平民止まりだったはずの赤葦も指令を考える側に加わった。

「あれどこから手組んでたんだと思う?」
「あ、それ聞いちゃう?」
「あのバチバチも演技かなー」
「役者かよ。何目指してんだよ。」
いや、マジで、どこから策練ってんだよ。
しかも、何当たり前に123フィニッシュ決めてんだよ。

「はい、では罰を発表します。」
話し合いが終わったらしい3人がこちらを振り返った。

「まず、平民の赤葦くんには木兎さんを連れ帰ってもらいます。」
友香からの指令により、赤葦が机に倒れ込んで寝ていた木兎を起こし始める。

「はい、帰りますよ。木兎さん」
「えー、もう帰んのー?」
「寝てたでしょ、あなた。大富豪の命令なんで従わないといけません。
じゃ、お疲れ。」
「「お疲れー。」」
友香はささっとトランプを箱にしまって、赤葦に渡して送り出していた。
過去1スムーズに赤葦が木兎を連れ去っていったかもしれない。

「はい、ではスガさんと大地さんは片付けをしてください。帰りますよ。」
「お、おぅ」
「分かった」
「クロも。」
まだ少しバラバラになっていた机などを2人の指示の元、綺麗に戻して片付けを終わらせる。

「戻ったらさっさと寝てください。昨日も同じ理由で遅くなったんですよね?」
「あぁ、気づいてたのか。」
「俺が目覚めただけです。他は気付いてないです。
あと、息抜きしたいならトランプでも何でも付き合うので、普通に呼び出してください。」
「ご、ごめん」
縁下の話を聞いていて、スガちゃんは友香と赤葦に似ていると思ったから、連れてきたんだなーとぼんやり思った。

「クロも。変な気とか使わなくていいから、普通に言って。私は付き合うか分かんないけど・・・。」
「わかった。」
ちょっと言ってて恥ずかしくなったのか、最後は目線をそらされた。

「気使ったつもりが・・」
「気遣われてしまっていた。」
「良い子過ぎて、先輩涙が出ちゃう。」
スガちゃんが少し離れたところで、ゴミの片付けの話をしている2人を見ながら、泣き真似をしている。

「まぁ、言い出しっぺは、うちの子でしょ。」
「いや、縁下は周りをちゃんと見れる奴だから。」
「いやいや、それに関しちゃ、うちの子ずば抜けてるんで!!」
「「帰りますよ!!!」」
サームラさんと睨み合ってると、しっかり者の後輩2人に怒られた。

「じゃ、俺らこっちだから。」
「うん、お疲れ。おやすみ。」
「三毛さんもお疲れ、また明日。」
友香は俺の横で、澤村と菅原にペコっと頭を少しだけ下げて、縁下には小さく手を降って見送った。

「相変わらずトランプ強いのな。」
「研磨相手に特訓したからね。
あ、パフェよろしくー。お店考えとくんで。」
「お嬢さん、何回連れて行かせる気よ。」
「あとで計算しとく」
もはや本人も覚えてないらしい。
そもそも大富豪はどこからが勝ち判定になるんだ?

「手加減しろよ?」
「いや、金額の上限も指定なかったんで。」
こういうこと言いつつ、本当に高いものは指定してこないことを知っている。

「大富豪はどうやって3人で手組んだんだよ?」
「え?手組んでないよ?普通にやったの。」
「嘘だろ?」
「ルール決めるときにどうやって切り上げるかの話はしたけど、ゲームは普通にやったよ。」
ノープランかつ、ほとんど接点がなくて、あの息の合い方は何なんだ。

「なんか、ちょっとクロと久々に一緒にいた気がする」
「確かになぁ。」
言われてみれば、合宿中は友香と事務的なやりとりはあっても、
会話はあまりなかった気がする。

「だって、クロは他の主将さんたちに取られちゃうし、
研磨は烏野のチビちゃんに取られちゃうしさー。」
「そんなこと言ったら、俺らは友香を烏野のチビマネちゃんに取られちゃってるんですけど?」
面倒見の良さか、気が合うからなのか、
最近入ったばかりという新人のチビマネちゃんを気にかけているようで、
よく一緒にいるのを見かける。

「そっかなー。確かに、やっちゃんと一緒にいること多いなー。可愛いんだよねー。」
「そんなに寂しいなら、もう少し声かけないとなー。」
「別に寂しいとか言ってないけど。」
「今そういう流れだったでしょうが!」
友香の笑い声を聞いて、久々にゲットした2人の空間というのを意識してしまった。

「でも、いつかクロと少し話さないどころか、何ヶ月も会わないようなのが普通になるのかなー。」
「急に先の話するじゃん。」
「ちょっと思っただけ。」
「それは寂しいと思うの?」
やべっ!何聞いてんだ俺!!
とは思ったものの、口から出たものは仕方ない訳で。

「やっぱ、今の「それは寂しいかなー。」
「へ?」
友香からの返事はちょっと意外なもので、思わず変な声が出た。

「うん!それは寂しいと思うかも。」
「え、あ、え、そうなの?」
「あまり想像出来てないけど、」




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