通信モニターの前でイオクは気まずそうな目をして座っていた。
理由は分かっている。
「クジャン公」
「……なんだ」
通信先を映す画面には、レギンレイズの主任技術者であるサラが頬杖をついている。
手元のタブレットに目を落としながら溜息がでるばかりだ。
ワンオフ機だったら絶対に乗せていなかった。絶対にだ。
「はっきり言って、きみの戦闘データ少なすぎ。誤射も多い。無駄。美しくない」
下手、の一言につきる。
実際、先の戦闘では避けたほうが当たるとまで言われた腕だ。
せめて自分程度の腕は欲しいものだ。グロースターを乗りこなしていたサラからすれば、機体の大きさを加味したとしても、もう少し頑張ってほしい。私の専門は開発だぞ。
最初は勤務中だからと気をつかってクジャン公と呼んではみたが、あまりにもお粗末な結果に取り繕うのもやめた。彼が何歳までオネショしていたかも知っている仲だ。
そんなイオクは横に置き、ジュリエッタには笑顔を向けた。
「どこかの誰かと違ってジュリエッタちゃんは優秀で、私とっても嬉しいわ」
「ありがとうございます」
彼女のお陰で最低限欲しい実戦データは確保できた。
「データを基にどんどんバージョンアップしていくから期待して待っていてね。あと、大変だけど子守りも頑張ってね」
「はい。嫌ですけどラスタル様のためですから」
「っ、おい!お前達!」
キャンキャンと煩い彼のことは無視し、ばいばーいとジュリエッタにだけ手を振って通信を切った。
得られたデータから改良点を頭に浮かべる。現行武装の利点と欠点。追加武装は何にしようか。ああ、開発って楽しい!
前世ではワンオフ機の開発に愛と全身全霊をかけて取り組んでいたが、この世界のフレームという概念も面白い。テイワズが開発した新型フレームの機体も気になる。
「と、いうことですが、」
いかがですマクギリス准将閣下どの?
先ほどとは違う通信モニターに話しかける。
「石動から報告は受けていたが、彼ら側からの視点というのも実に有意義だ」
「それは重々」
「さて、我が地球外縁軌道統制統合艦隊にはいつごろ配備可能かな?」
「善処します、とお答えしておきましょう」
「ふふ、期待しているよ」
コーヒーを淹れるためにサラは椅子から立ち上がった。今日のおやつはチョコにしよう。
マクギリスとの通信は切れている。