ほしくず


同類:一期:三日月[20161225]

アフリカンユニオンの公営企業であるドルトカンパニーが所有する、コロニー群。
今、そこにシエルはいた。

ドルト2に届けられた例の荷物を確認したあと、やがて戦場となるドルト3へと移動する。
着々と進むラスタル・エリオンが思い描く未来に、シエルはただ、これからの己の任務のことを思った。
仕込んだ争いの花火がやがて上がり、ギャラルホルンの守備隊による武力鎮圧と言う名の虐殺が始まる。そのきっかけともいうべき爆弾を仕込んだ彼女であったが、良心の呵責だとか後悔といった気持ちは全くない。
当然だ。彼女にとってこの地に住む人々など、どうでもよい存在なのだから。そこらにある雑草と同じだ。




廃墟となって久しいマンションの一室で一人の少女が殴られていた。
十代前半――いや、もっと幼いだろうか。守備隊の屈強な男の平手に屈することなく、何も話すことはないの一点張りだった。
シエルはその悲鳴を、連行されたもう一人の少年とは別の部屋で、銃器の手入れをしながら聞いていた。

突如響く轟音と振動。建物が衝撃で少しばかり揺れた。姿を隠すように窓の外を覗き込めば、車が1台マンションに突っ込んでいた。
次いで聞こえる発砲音。
シエルはドアの側に待機し、いつでも引き金が引けるようにトリガーに指をかけた。

足音がいくつか聞こえた後、少しの静寂。どうやら侵入者はもうこの建物から出たようだ。
現状を把握するため廊下に出る。急所を数発撃たれたスーツ姿の男が数人、床に倒れていた。
容赦の無い発砲だ。まるで木彫りの人形でも相手にしたかのようだ。邪魔だから片付けた。ただそれだけ。
その容赦の無さに、シエルはどこか己と通じるものを感じた。

窓の外から男の悲痛な叫びが聞こえる。
待ってくれ、と懇願する声の方向に走る。路地裏に面した出入り口から外に飛び出し、すぐに建物と建物の間へと体を滑らせる。思ったよりも近くにいた。
手酷く殴られていた少女は同じぐらいの背丈である少年の肩に担ぎ上げられており、捕まっていたもう一人の恰幅の良い少年も一緒だった。
3人の少年少女の前に、トラックが1台大きなブレーキ音を立てて止まる。
恰幅の良い少年が兄と呼んだ男と話す。どうやら感謝と別れを告げているようだ。
守備隊の男の発砲をきっかけに、彼らはトラックに乗り込み、この場を走り去った。

シエルは身を潜めいていた場所からゆっくりと前に出、自分は然も今ここに来たとばかりに守備隊の男に話しかけた。二人は一言二言話した後、シエルは男達に背を向け、次の場所へと向かった。引き止める声はない。
彼らにとっては彼女も、地面に両膝をつけたまま放心する男――サヴァラン・カヌーレと同じ、ただの情報提供者でしかないからだ。銃はばれないように隠してある。彼女の本来の任務を守備隊の平隊員である彼らは知るわけもなく、また知る必要もない。




ドルト本社に仕掛けた時限爆弾が起動したことを確認したのち、次の作戦のためにシエルはコロニーをあとにした。
背後で轟く悲鳴は聞こえない。


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