ほしくず


不安:二期前:ジュリエッタ[20161120]

人を殺したことがあるか?と聞かれたら「はい」と答える。
ではなぜ殺したのか?と聞かれれば「そこにいたから」と答える。

彼女の前をふさぐもの―――即ち、敵である。
彼女はただ目の前の敵を倒しているだけなのだ。
そこに、嫌だとか好きだとかの気持ちはない。



アリアンロッドの中にあるシミュレーションルーム。
そこでシエルはハイスコアをたたき出していた。得点はジュリエッタより上である。
CPU相手のシミュレーションが終わった後はジュリエッタと模擬戦を行う。シエルがラスタルの下に就いてからの日課だ。

シミュレーション用の汎用機ではなく、今後、実戦の主力機となる、自分達用にカスタマイズされたレギンレイズを使用しての模擬戦。データは既に打ち込んである。

近接格闘に特化したジュリエッタのMSと、同じく近接戦闘寄りのシエルのMS。違うのは、ツインパイルではなくレイピアとダガー(こちらは攻撃と防御の両方で使用する)が装備されている。レイピアは弱点である刀身の脆さをカバーするために、通常よりも硬い素材を利用し、強度を高めている。
また、130mm口径のライフルを二丁(そのうちの一丁は銃身部分を取り外した状態で)装備している。レイピアがなにかしらの理由で手元から失われた場合、近接戦闘ではショートバレルライフルが代わりと(追撃にも)なる。また、ダガーも。
機体にはジュリエッタ機と同じく高出力・高機動化が施されており、ヒットアンドアウェイが主体のシエル専用機だ。

戦闘開始の合図が上がる。
お互いの武器を手に、速いスピードで機体を動かす。
突いて殴っての繰り返し。
此度のシミュレーションもシエルの勝利で終わった。



ジュリエッタは不安だった。
敬愛するラスタルがどこからか連れて来た女。自分より1、2歳程度年かさの。

一度、ラスタルに気持ちを打ち明けたことがある。
なんだか不安に感じるんですと。
不安を口にすることで、ラスタルに安心させて欲しかったのかもしれない。それは杞憂であると。

ジュリエッタは名もない孤児であった頃、運よくラスタルとガランという、運命を左右する出会いがあった。

彼らに拾われる前は、何のために生きているのか分からなかった。ただ死んでいないだけ。食べて、寝て、排泄するだけの。

だがそんな日々も、ラスタルに拾われるまでのことだった。
ジュリエッタの人生に意味をくれた人。ジュリエッタにとってラスタルは光だった。

ジュリエッタが不安に思うのは、彼女の操縦技術だ。
ジュリエッタは訓練でその技術を見につけた。ガランという師によって鍛えられた。だが彼女は?
記憶喪失で、何処の誰とも知れない。何処でMSの操縦を覚えたのかも分からない。しかも、自分より強い。

問題ないというラスタルの言葉、ひいてはラスタル自身を疑うことはない。彼の判断が間違っているわけがないからだ。
不安に思うのはジュリエッタが弱いからなのかもしれない。彼女に、まだ一勝もできていないのだから。自分の価値はいったい?

不安を打ち消すように、ジュリエッタはシエルから操縦技術を盗み、少しでも強くなってやろうと次の戦闘を開始した。
絶対に、勝たねばならないのだ。


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