サラはアジーの分かりにくいところが好きだ。
分かりにくくて分かりやすい。
そう、名瀬の前で素直になりきれないところだ。他のクルー達と違って。
他のみんなは、皆、感情表現がストレートだ。
くるくると変わる表情、喜びを全身で表現する彼女達。
そんな可憐で、でも芯の強い彼女達のことがサラは好きだ。兄と一緒で。皆、愛している。
そんな彼女達と少しばかり違うのがアジーだ。
名瀬に対する愛は他のみんなと遜色ないが、どうやら気恥ずかしさが勝つらしい。
でも、そこが可愛い。アジーの魅力だ。
サラがアジーの魅力を分かっているように、名瀬もそんな彼女の魅力を分かっている。
可愛いもの、美しいものは皆で愛でればよい。もちろん、愛でても良い人間に限るが。
もしもこれが、あのいけ好かない割れアゴ野郎のジャスレイ・ドノミコルスであれば、サラは自分だけの宝物にしていた。もちろん、正々堂々と愛を囁いて。
今もそう。アジーよりも背の低いサラに壁際に追い詰められ、熱い視線を一身に浴びている彼女の頬は薄く色づいている。
美味しそうな桃色。食べてしまいたいくらい。
ぺろり、と舌舐めずりをしたサラに、アジーの肩がぴくりと跳ねる。ああ、なんて可愛い!
本当は期待しているくせに、視線はサラから外したまま。だって、本当に嫌なら突き飛ばせばよいのだ。アジーの方が強いのだから。
「アジー」
鼻先が触れ合うほどの距離で、甘く囁く。まるで魔女のように。甘い言葉と罠で誘惑する。
アジーともう一度名を呼べば、おずおずと、アジーの薄く形の綺麗な唇が、サラのそれと重なった。