::もしもガエリオを回収していたら
無意識のうちに、とでもいうのだろうか。
気付けば調整のためラボに一時保管されていたグレイズリッターに乗り、エドモントン郊外へと駆けていた。
無残なまでに斬りつけられたガンダム・キマリス。
マクギリスの実力の高さが窺える。
コックピットをパイロットがギリギリ生き残れるかもしれない――運が悪ければ死ぬ――そんな、神に委ねるような、絶妙なさじ加減。いや、神ではなく悪魔の気まぐれか。
サラはMSから降り、キマリスに駆け寄った。コックピットハッチに付いている緊急用の外部ハンドルを回そうとするも、損傷により不具合が発生しているのか、わずかばかり軋むだけで動かない。
仕方なくもう一度MSに乗り込み、無理やりに外装ハッチを剥がす。コックピット内部を傷つけないよう慎重に、だが素早く。
そうして虫の息であるガエリオを回収し、手早く最低限の応急手当を施してから、グレイズリッターを発進させた。
「なぜ、俺を助けた」
意識が戻っても、ガエリオは色の無い瞳で、天井をただただ見ていた。
そうして数日、ようやく口を開いたと思えば、これだ。
「こうしておめおめと生き残ってから…ずっと、聞きたいと思っていた。お前とマクギリスは繋がっていたのだろう?」
ああ、今もだったな。
乾いた笑みを浮かべ、サラに問う。
「どうせ、お前も俺を嗤っていたのだろう?何も知らず、マクギリスの、親友だと信じていた奴の手のひらの上で踊る俺を。滑稽だと嘲笑っていたのだろう?」
なあ、そうなのだろう!と、ガエリオは己が横たわるベッドへと拳を振り下ろす――が、ゆるゆるとした動きでぽとりと落ちた。
到底、本調子ではないのだ。身体の。
少し前まで、喜怒哀楽を素直に乗せていた彼の双眸。ボードウィン家の嫡子という立場から、いつも感情をあらわにするわけではなかったが、それでも十分に、まっすぐな色をのせていた。けれど、
「っなぜ、お前が俺を…!」
「…さあ?なんでだろうね」
そんなこと、自分が聞きたいくらいだ。
ただ、何となく、このまま死なせるには惜しいと思った。
それだけだ。
ベッドに背を預けたガエリオからは、彼女が今、どんな顔をしているのか分からない。