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並盛高校一年A組。

そこで沢田綱吉と出会ってから、私の人生は大きく変わった。

具体的にどう変わったのかというと、超一般人だった私はマフィアになった。…いや、嘘じゃないんです。ほんと、ほんと。



元から動体視力はそこそこ良かった。あと、友達の影響もあってかシューティングゲーム関連が好きで、リボーンに目をつけられたのは、彼の拳銃を見たとき、Cz75だ、とこぼしたからと言うなんでもない理由からだった。

それからリボーンの気まぐれでちょっと殺傷能力の高いエアガンを持たされた私は、何を考えるわけでもなく、綱吉やその仲間たちが危険だ、大変だ!と思ったときにそれをぶっ放し続けた。それが高校一年生の春から夏までの出来事。

後から考えれば、綱吉たちが戦うマフィアたちは、マフィア同士の争いなら躊躇なく炎を使ってくるというのに、せいぜいかすり傷をのこせるかどうかといった程度のエアガンでそんな奴らと戦おうとした私は相当なアホだと思うし、実際その頃よく怒られた。…仕方ないじゃん、まだそのときは綱吉たちがマフィアなんて教えてもらってなかったんだから。

そうしてその後、少し規模の大きい戦いがあった。高校を卒業次第ボンゴレを継承する綱吉を始末しようとする勢力との戦いだった。私はそのとき初めて、綱吉たちがマフィアであることを知った。…知った以上逃げられないということも、同時に。

いや確かに、エアガン渡されてほいほい撃ってた私も悪いんだけど、止めてくれても良くない…?問答無用で裏社会の人間にさせられるって。

まあそこらへんは当時相当悩んで怒って解決したからいいとして、その後私はなぜか、リボーンの弟子になった。生徒ではなく、弟子だ。ディーノさんによると、リボーンが弟子を取るなんて一生無いと思っていたらしい。それだけ見込まれてるってことだな!とあっかるい笑顔で言われて、ちょっとうれしいなとか思ったのは間違いだった、本当に。

高校一年の秋の初めから、私はリボーンに世界中のありとあらゆる無法地帯に放り出されることとなった。前段階として最低限の技術を叩き込まれ、拳銃二丁とライフルを一丁、これまた最低限のお金を持たされて、一週間くらい死ぬ気で生き延びろよ、と言い残されて。

私の炎の属性は嵐なのだが、リボーンはその特訓の最中、私に指輪を渡すことは無かった。純粋に技術だけを磨くためだったらしい。

そんなこんなで、日本国外で一冬越した頃には、私の精神は鋼よりも強固なものとなり、少々擦り切れ、技術はリボーンの半分に満たないにしろそこそこ戦えるくらいには成長していた。

「…師匠はやばい、ほんと、あれは人間じゃないかもしれないよ綱吉、ほんとに」

「一体どこに放り出されたの?」

「世界各地の治安最悪都市。もうね、日本の犯罪件数とか相当やさしく見えるレベル。めっちゃ街並みきれいな癖して死ぬほど治安悪いとかよくある」

一週間、宿を取っても安眠はできず神経をすり減らし、日中外に出なければどこから見張っているのかリボーンに狙撃される。よくまあ死ななかったものだ。それなりに素質あったんじゃないか、と自画自賛した。

不思議なことに、リボーンを嫌いにはならなかったし、技術が磨かれていくことについては楽しさすらあった。

その後は度々一ヶ月くらいの期間で同じように世界中をつれまわされた。そんな中で、私はリボーンの"生徒"と"弟子"の違いが何たるかを知った。

リボーンはフリーのヒットマン。綱吉がボンゴレを継承し、立派な十代目になれば、その時点でリボーンのお役目は終わり。綱吉がボンゴレのボスとして再び何らかの依頼をリボーンと結ばない限り、リボーンはそうそうボンゴレに顔を出すことは無くなるだろう。だからだった。

綱吉はリボーンの最高傑作。綱吉が立派なボスとなるための知識を余すことなく教育した"生徒"。そして命の恩人。きっとリボーンは心のどこかで、返しきれない恩を感じたんだと思う。けれど彼はフリーのヒットマン。そのスタイルを変えることは無い。だから、リボーンが居なくなった後、同じように綱吉を守れるように、己の技術すべてを教え込むために"弟子"をとった。

私なんかにリボーンの代わりが務まるとは思えなかったが、それでも私は世界最強のヒットマンであるリボーンの技術をすべてこの身体に覚えこませた。



そんな特訓の一環。曰く、「単独行動可能のオールマイティなヒットマンになるんなら、ツテも必要だろ?」。

イタリアの警察とボンゴレは仲が良い。だが、日本にボンゴレ日本支部を作るにあたって、日本警察とのツテが何一つ無いというのはまずい。

「え、日本警察とのツテなんて、雲雀先輩がいくらでももってそうじゃ…」

「ん?何か文句あるのか?ベネズエラに放り出しちまうゾ」

「ひぇっそこだけは、そこだけは勘弁して師匠!!もうやだ!!」

「んじゃいって来い。残念なことにてめぇは高校一年から休みだらけで単位が何一つ取れてねえ。というわけでもっかい高校生やり直して来い」



______日本のヨハネスブルグと名高い米花町、帝丹高校で。



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