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どうも皆さん、実年齢十九歳の高校一年生桐生樹です。
現在帝丹高校の入学式に出席中です。それでは今回のリボーン師匠の無茶振り特訓の内容を詳しくご紹介したいと思います。

端的にいえば、この米花町で何らかの組織に潜入している潜入捜査官である警察官からの信頼を得て互いに利益を提供しあうような関係を作れということだ。

まず"何らかの組織"ってところに突っ込ませてほしい。何らかって絶対リボーンはわかってるはずだ。つまりそこのところは自分で調査しろっていうことだ。なんて鬼畜。
それに潜入捜査官と仲良くなれって、そうとう厳しい。だって自分の正体がばれないように毎日朝から晩まで気を張っているはずの人とどう仲良くなれと、っていうかどこに居るかも知らないのに。

それから、リボーンは私に、自分がヒットマンであることを忘れるなと口を酸っぱくして言い聞かせた。
綱吉はきっとまだ自分の手で誰かの命を奪ったことはないのかもしれない。それはまだ、日本という平和な国にとどまっているからだ。殺さなければ自分が死ぬ、そういう環境に放り込まれた私は、割と早い段階でそのへんについては割り切れるようになっていた。
リボーンは、殺すことに戸惑いを覚えるなと言いたいのだろうか?

ぐるぐる考えているうちにいつの間にかクラスの発表と担任の紹介が終わり、私たちは各教室へと移動した。
私の前の席に座った霧島美穂という女の子が、にこやかに話しかけてくれる。
「はじめまして。よろしくね、樹ちゃん」
「こちらこそ!よろしく、霧島ちゃん」
しばらく彼女と話していると、この学校の二年生には工藤新一という有名な高校生探偵が在籍しているのだという。その明晰な頭脳で解決できなかった事件は一つとしてなく、日本警察の救世主と呼ばれているらしい。なるほど、日本警察の。
じゃあ私も事件解決に協力すればいいのだろうか?…無理か、頭脳的に。リボーンにも最低限の学力以上は諦められてるくらいだし。
「それでね、その工藤先輩ってすんごいイケメンらしいの!樹ちゃん、見に行かない?」
「えっ、話しかけたりするの?霧島ちゃんアグレッシブすぎない?」
見た目めっちゃふわふわなのに、意外と押せ押せな感じだった。
まあ見ておくのも悪くないかと、霧島ちゃんにくっついて、私はホームルームが終わるとすぐに2年生のフロアへと向かう。
「霧島ちゃん霧島ちゃん、何組にいるか知ってるの?その先輩が」
「大丈夫!二年生の先輩に仲のいい人がいて、同じクラスらしいから!」
本当にこの子アグレッシブだなと半ば感心しながら、引っ張られるまま付いていく。
霧島ちゃんは教室の前で立ち止まると、「園子先輩いらっしゃいますか!」と堂々と教室に入っていく。
「あら美穂、早速来たわね!って、その子は?友達?」
「はい、桐生樹ちゃんです。ところで園子先輩、わたし、工藤先輩にお会いしたくて来たのですが」
「あたしが言えたことじゃないけど、あんた本当にイケメンに目がないわね…新一くんならあそこよ、あそこ」
私が口を突っ込む暇もなく園子先輩とやらと霧島ちゃんの会話は進んでいて、園子先輩は「おーい新一くーん」と霧島ちゃんお目当ての工藤先輩を呼んでいる。
工藤先輩は怪訝な顔をしてこちらに近づいてくると、園子先輩に何?とでも言いたげな視線を向けた。
「この子、霧島美穂。新一くんのファンなんですって。大手警備会社の社長令嬢だし、ツテを作っといて損は無いと思うわよ。ね、美穂」
「はい!最新の防犯グッズから警備員の手配まで、格安で請け負わせていただきます!」
なんと。
霧島ちゃんはお嬢様だった。しかも相当の。
霧島ちゃんの勢いに引き気味だった工藤先輩はツテという言葉に惹かれたのかなんなのか、霧島ちゃんと握手をしていた。
で、そっちは?と工藤先輩に視線を投げかけられた私は、思わず苦笑いした。
「えーと、桐生樹です。霧島ちゃんに引っ張られるままここに着いていて…ほんの興味本位で来たんですけど」
良かったら仲良くしてください、と握手をしようと右手を出す。工藤先輩はおう、よろしくな、と握手をしてくれた。


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