黒井さんを助けに行く飛行機の中、理子ちゃんは不安をかき消すように一生懸命クラスメイトの話をしてくれた。隣の席のあの子は誰とか、クラスで一番のお調子者は、だとか。
外にあまり遊びに行けない分、学校でたくさんの写真を撮っていてそれを大切に持ち歩いている。
そんな写真を見せてもらいながら、目に付いた、一際大人びた女の子。

「この子…」
「む、撫子は駄目じゃ!惚れたか!?」
「いやそうじゃないけど」

誰?と会話を聞いていた悟が写真を覗き込む。

「天内と違ってめちゃくちゃ大人っぽくて美人じゃん。惚れたか?」
「お?やるか?」
「だから違うってば」

その写真の女の子は呪詛師の爺さんに襲われていた子だった。ナイフを突きつけられても尚堂々と、友達を守るために呪詛師に対して震えながらも自分を犠牲にする、強い女の子。
理子ちゃんにこの事を言うべきか迷ったが、もう二度と会えない友達のことを言えば別れが辛くなると思い、言えなかった。

「撫子は財閥の令嬢なのだが、その立場に決して甘えたりせず、いつも真っ直ぐで、努力家で…。孤立した妾に一番最初に声をかけてくれたのも撫子なのじゃ!」
「へー、めちゃくちゃお嬢様じゃん」
「馬鹿者!お嬢様という次元を超えておる!」

道理で中学生にしては品があって大人びていると思った。そういう風に教育を受けていたのだろう。まるで中学生とは思えない雰囲気に少し心が動いたのは悟には絶対に言えない。にしてもよほど仲が良かったのだろう、楽しそうにその撫子ちゃんとの思い出を語って、もう聞き飽きて疲れた頃にようやく飛行機は沖縄に到着した。

「あれ、傑なんか付いてんぞ」
「え?」

悟が何の気なしに私の襟元あたりについていた何かを拾う。気が付かなかった、悟の手の中にある何かはキラリと照明に反射して光る。
女性物の、ピアス。
それを見て悟がニヤニヤ笑う。誰のピアスかな?と茶化すけれど、ここ最近は心当たりがない。何日もこんな所に引っかかっているとは思えないし、と、記憶の中を探ったが誰もこんなアクセサリーを身につけてはいなかった。

「これ、撫子のピアス…」
「え?」
「え、なに!?傑、JCに手出してたの!?ヒューゥ!!」
「さすがに怒るよ、悟」

言い逃れはできないか、と事の顛末を話す。案の定、理子ちゃんは泣き出して、その撫子ちゃんに思いを馳せていた。

「撫子、妾を助けるために…、馬鹿者…っ!」
「良い友達を持ったんだね」
「……うん!」

にしても、理子ちゃんが言うにはこのピアスはあの女の子がとても大切にしていたピアスらしい。なんでも、お父さんからのプレゼントだとか。無くなったと気がついたら相当ショックだろうなと、花の形で、その花弁の真ん中に偉く輝きある宝石のついたピアスを眺めて、無くしてしまわないようにと胸のポケットに入れた。

「傑、俺には分かるぞ」
「…なんだよ」
「惚れたな」
「違うって」

にやけ面の友をあしらって、黒井さんを助ける為に指定された場所まで歩を進める。
だけど、確かに、そうかもしれない。あの純粋な瞳に、強い心に、惹かれている自分は確かに存在する。
ピアスを返しに行かなくては。
きっと無くして悲しんでいるだろう。
その時に連絡先でも聞いてみようか。きっといける。
あの瞳は、私の姿を最高にかっこよく映していただろうから。

あのときのはなし