かなり厳しいノルマを課していた自覚はあるらしく、驚いている様子だった。
『どうやったんだい』
「私、こう見えて高級クラブのホステスですよ。元財閥令嬢の付加価値もあります」
『寝たのか』
「寝ました。もうあの店では働けません」
そもそもこんなに集めることが出来たのも、枕営業だけはしなかった私が漸く股を開いたことによるレアリティのおかげだし、詐欺まがいだってやった。
もう私は立派な犯罪者だ。むしろ刑務所に行った方が幸せな人生歩めるんじゃないだろうか。
復讐なんて考えてる時点で幸せな人生なんて望んではいない。こいつが地獄に落ちればそれでいい。あとは私も地獄に落ちてやる。
「これで認めてくれますか?」
『いいね。期待してるよ』
じゃあ拠点に来てくれるかい?家族に紹介するよと言われ、そのまま電話を切られる。
私は言われるがまま足を進める。もう後戻りはできない。
「では新しい家族を紹介するよ。猿の撫子だ」
その夏油の"家族"にはやはり歓迎をされていないようだ。みんな、呪術師なのだろうか。普通に私よりよっぽど年下の女の子とかもいるし、半裸のニューハーフ?みたいな人もいるし、外国人の人だっている。でも総じて言えるのは、わたしは歓迎されてはいないということ。その目を見たら、すぐにわかる。
「はい、お猿の撫子です。猿なりに体を張って主に資金集めをしますが術師の人間様とは関わることないと思うので猿のことは無視してくれて結構です」
「夏油様、何コイツ!ちょおムカつくんですけど!」
「菜々子、撫子はもう家族だ。侮辱は許さないよ」
「ーーッ!」
いや家族じゃないし。きっと夏油はそんなことを言って本当の"家族"に反感を買わして、私が泣き言を言うのを楽しみにしているんだ。
この人たち、本当に非術師が嫌いなんだな。何が原因でそうなったかは知らないけど、夏油についているということは相当なんだろう。
でも大丈夫。私はきっとやっていける。
こんなクソみたいな奴らに、負けたりするものか。
「まあ木の実拾ってくるポケモンだと思って可愛がってくださいよ」
猿なんだし。猿を気にしてる方が愚かでしょ。
そんなことを思っているのがバレバレだったのか、どっちにしろこの一言で相当嫌われたらしく、呪力なんてまったく分かんないのに鳥肌が立って、妙に背筋が凍って体が震えるのを感じ、必死でおさえた。これが殺気か。人に殺意を向けられるというのは中々に不快なものだな。
「じゃ、猿は退散しますよ。金集めなきゃいけないしね」
ヒラヒラと手を振ってその部屋を後にする。
余裕を見せるというのは難しい。今になって我慢していた震えが外に出てきた。
いつでも殺せる、私のことを。いとも簡単にすぐに殺せる。
一方私はどうだ、夏油のことをすぐに殺せるか?計画を練り、隙でもつかない限り殺すことはできないだろう。
「どうした、震えているよ」
長い廊下。震えが止まらず壁によりかかっていると何故か夏油が追ってきた。いや、追っては来ていないか、なにか用があって、そのついでにチワワのように震えている私を笑いに来たのだ。
「…あなたのことはなんと呼べば。あの子みたいに、夏油様と?」
「好きに呼んでくれてかまわないさ。私は敬称を強要しているわけではない」
「じゃあ、夏油」
「…猿に呼び捨てにされるのも癪だな」
「出かけます。金はまとまった時に振り込めばいいですか」
「それでいい。くれぐれもくすねたりするなよ」
「まさか、自分の命が惜しいもの」
できるだけ夏油の姿を見ないように、背を向けると夏油はいつの間にか私の目の前に立っている。
あれ、背を向けたはずなのに。
考えるだけ無駄か、呪術師はみんな瞬間移動もできるんだろうか。
「気をつけて行ってくるんだよ」
「…、は」
頬を撫でられ、咄嗟にその手を払いのける。何をされたか理解に少し時間がかかり、わかった頃には夏油は私の前から姿を消していた。
なに、"家族"にはいつもしているのだろうか。
でも私は猿。あいつの言う"家族"とは違う。
まるで恋人にするような行為に心が乱されたけど、すぐに振り切り拠点を後にした。