ー安室視点ー
お店を覗いて入店しようか迷っている女性が梓さんに連れられて入店してきた。
見たことない顔だ、初めての来店だろう。
だが彼女には用事がある。
「いらっしゃいませ」
ついさっき帰ったお客様に、今入店した彼女の特徴を言われ彼女に本を渡してほしいと頼まれた。
依頼主も今まで見たことがない人で、不思議なオーラを放っている人で思わず引き受けてしまった。
本は無地の表紙だけれど中身は何の話だろうか。
少し興味があるが彼女を案内しなければ。
「こちらの席にどうぞ」
『あの、本が置いてあるのですが忘れ物じゃないですか?』
「前のお客様が次に座るお客様に読んでほしいとおいて行かれたんです。
あなたの特徴を挙げられていたのでお知り合いかと思ったのですが…」
『そう、ですか?では読んでいこうと思います。』
知らない人からの本だというのに素直な人だ。警戒心がないだけかもしれないが。
まぁ危険物な様子もないし大丈夫か。
夕方になりかなりお客様が減った。
先程の彼女はまだ集中して本を読んでいるようだ。
!!泣いている!?
窓際の席で夕陽に照らされながら静かに泣いている彼女を見て、柄にもなく見とれてしまった。
どうも感動して泣いているわけではなく、辛そうな表情をしている。
ここは僕が行くより梓さんに行ってもらった方がいいだろう。
「あのお客様にこれを渡してきてくれませんか」
そういって自分のハンカチを梓さんに手渡す。
「あ!!本読んで感動しているんですかね?渡してきます!」
そういうと梓さんは彼女にハンカチを渡しに行った。
「これ、よろしければおつかいください」
『え…あ、すみません…いい大人が泣いてしまって…』
「いいえ。感動するお話だったんですか?」
『いえ、もう会えない人からのお別れの言葉でした。
今までいたところからこちらに移ってきて、お別れを言えないままだったんです』
「そうなんですか…でも本でくれるなんてすごいですね!」
『本当に。私の宝物になりました』
「こちらに最近引っ越されたんですか?
『今日ついたところです。誰も知り合いがいなくて寂しくなっていたので声をかけてもらってうれしかったです』
「そうなんですね!よければお友達になりませんか?私榎本梓っていいます!」
『うれしい!竹中彩花といいます。よろしくお願いします、梓さん』
「よろしくお願いします、彩花さん!」
2人は仲良くなったみたいだ。
竹中彩花、さんか。
怪しい気配はないが不思議な人だ。