古代バビロニア次元の話
※夢主の設定がやや濃いです
"私"という存在が自我を持ち始めた時には既に肉親の姿はなく、注がれる眼差しは氷のように冷ややかでいつも暗澹に包まれた狭い空間に居た。
友はおろか話し相手すらおらず、何故罪を重ねた大罪人のような扱いを受けているのかその理由すら分からない。
「お前は半神半人。神の名汚しだからだ」
理由を問うた私に名も知らぬ男は目を合わせることもせず淡々と告げた。
最高神から寵愛を賜りながら地上に降りた際に人間の男と許されぬ恋に落ち、そうして生まれ落ちたのが貴様だと付け足すように説明される。そこでやっと私は燻り続けていた神々に対する思いに納得した。
神から独立し歩み始めている人間とある男を支配下に置こうとする神々の身勝手さ、過去の栄光に縋りつく滑稽でみっともない姿。神々に背きひとつの国を治めるギルガメッシュという存在に対する憧れとも尊敬とも取れる感情。
人目を忍んで薄暗い部屋から抜け出すと間近の月から優しい明かりが廊下に降り注いでいる。
頬を撫でる風の冷たさに少しだけ眉を顰めながら巨大な月をひとり眺めた。
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──静寂のなかひとり狭い部屋で体を縮こませているのが苦手になったのは、この空間から抜け出る事が叶うのであれば如何なる条件も飲もうと思うようになったのはいつからであったか。
最高神を前に頭を垂れ、下された命に二つ返事をした半神半人の少女ディオネは直ぐさま玉座に背を向けた。
ギルガメッシュを神々の前に差し出せ、生死は問わぬという命令であったがその"生死"には私の命も含まれているのだろう。
ディオネがギルガメッシュの手によって死に至る、はたまた共倒れになったのであれば万々歳とあれらは思っているのだ。
人生の大半を過ごした仄暗い私室と呼ぶにも些か疑問が残る部屋から鮮少の私物を纏めたディオネは一度も振り返ることなく、部屋を後にした。
フードを目深に被った彼女が目指すのはギルガメッシュが統治するウルク。ディオネの胸は未知なる物への探究心と期待で高鳴り続けていた。