お手をどうぞ

「おかあさん!わたしの活躍みてくれてた!?」
「うん!ジャックが頑張ってるところちゃんと見てたよ」
目に見えて表情を明るくさせたジャックが梓の腹部に飛び込んでくる。
お腹にグリグリと頭を押し付け甘える仕草はさながら母親に甘える娘そのもの。
(梓の年齢から考えて貴様のような小娘が居てたまるものかと漏らす某英雄王に人差し指を立てた立香が諌めていたのは当人には黙っておこう)

「前々から思っていたのですが梓さんがジャックさんのお母さんならお父さんは誰になるのでしょう…私、ちょっと気になります」
マシュの天然さを極めたこの発言で先まで流れていた和やかな空気は突如としてギスギスとした、重苦しいものへと豹変した。
その事に気が付いていないのは発言者たるマシュと梓に甘えっぱなしのジャックくらいだろうか。
三つの金がその空間でやたら目を引いていた。

***

「梓さんの夫はボクにしか務まらないと何度も言っているのに何で分かってくれないんですかね……」
「ほざけ。いくら幼き我とはいえ梓の伴侶の座は譲らんぞ。お前が梓を満足させられる訳がなかろう」
「二人共止めんか見苦しい…梓が困ってあたふたしているのが分からんのか。自分本位の奴らはこれだから困る」
キャスタークラスのギルガメッシュの一言で三人の間に発生していた火花が激化したのを見て、ひっ!と梓が悲鳴をあげる。
特異点から帰還してほっと一息つく暇も与えられず、強制的に私室に投げ込まれ三人が討論(?)し続けるのを眺め始めてどれ位の時間が経過したのかと横目で時計を見る。
相性が最悪な子ギルとアーチャークラスのギルガメッシュの間に割って入り仲裁するのがキャスタークラスのギルガメッシュの役割のようなものになっていたのだが、今回ばかりはそうではないようだ。

「何で3人ともそんなムキになってるの?らしくないよ」
「当事者はあれだからな…頭が痛くなってくる」
「今回ばかりは大人のボクに同意です」
『……はぁ』
3人のギルガメッシュが肩を並べて溜息をつく理由が分からず顎に指を当てて悩んでいると子ギルがそうだ!と明るい声を上げた。

「梓さん自身に選んでもらいましょう!どうして思いつかなかったのかな」
「それならば誰も文句は言うまい。良いな貴様ら」
「して雑種。誰を選ぶのだ?」
腰に腕を回してきたアーチャークラスのギルガメッシュから距離を離そうと手に力を込めながら強いて言うなら誰だろう…と考える。
口から出た名前は……。
(選択式。子ギル、弓ギル、術ギルお好きなギルガメッシュをお選び下さい)
(ギルガメッシュ'sがマスターを取り合うほのぼのギャグ甘)

極夜