声を枯らし叫んだとて
※暗夜√以上の病み腹黒ミン
「私が生涯忠誠を誓いお守りすると誓った方は貴方ではありせん道を開けて下さい」
仁王立ちをしたまま動じる様子のない少年に剣呑を覚えつつ魔導書を携える。
「ルネッタは僕達と、白夜の一員として戦うつもりはないんだね」
「さっき申し上げた通りです貴方が通してくれないのなら力づくでも!」
カシャンと黒い何かが放物線を描き目と鼻の先に落下する。
顔を顰め白夜の王子を見やった後"それ"をまじまじと見つめた私は震え出す体を御しきることが出来なかった。
「見覚えあるだろ?あんたが忠誠を誓った奴の物だ」
「は、ハッタリですか。生憎ですが私にはそんなもの」
「嘘だと思うならそれでいいんじゃない?じきに分かる事だしね」
声にならない呻きと絶望が私を満たしてゆく。
次期暗夜国王として生を受け、武芸にも秀でた宝剣ジークフリードの担い手。それが私の主だった。
今にも手放してしまいそうな意識をすんでのところで奮い立たせ、自分に言い聞かせる。
「(大丈夫、まだマークス様はジークフリード片手に奮戦していらっしゃる。アレはきっと何らかの拍子に落とし、て……?)」
全身から再び全身の血の気が引いていくのを感じた。彼は騎士として最高の勲章を持ち、いつも愛馬と共に戦場を駆けていた。
そんな人が装飾品……髪飾りを落とすだなんてまずそうそう有り得ない。
もしやマークス様は、落 馬 さ れ た ?
やっと失っていた暗夜での記憶が戻り真に忠誠を誓った方の為に生きる事が出来ると思っていたのに。
私はただ暗夜へ、あの人達の元に戻りたかっただけだったのに…!!
「暗夜の兄弟と裏切り者のカムイは残念だけどまだ生きてるよ。あいつらルネッタがここで僕と戦闘に入った耳に入った瞬間すぐ現れてさ…傑作だったよ!僕の隊に蜂の巣にされる様は!!」
強く噛んだ唇から血が滲み生臭い鉄の匂いが鼻を掠める。見上げた先の王子はそんな私の様子をさも愉快と言わんばかりに口端を上げて笑っていたが、目が合うなり昔よく見せていた柔和な笑顔を浮かべた。
「僕は優しいからもう一度だけルネッタに選ばせてあげる。これからも僕達と一緒に暗夜と戦ってくれる?」
「……この卑怯者っ!悪魔!!」
「言いたいことは全部吐き出した?…で、ルネッタはこれからどうするの」
最初から答えなんてひとつしかないくせに、この男は私の口がそれを紡ぐのを待っている。
なんて醜い心と吐き気を催すような趣味を併せ持った外道だ。
「…わたしは」
無音になった空間で言葉を作る唇。
タクミは唇を歪ませると満足げに笑っていた。
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極夜