駆逐がーる
※近親相姦を匂わせております
「ルネッタ」
第三者が聞いたら驚いて腰を抜かしてしまうような甘い声で名前を呼びながら少女を抱きしめるのはルネッタの双子の兄であるエレン。
いつも通り1人でベッドに丸まり眠りに落ちたはずなのに目覚めると双子の兄が纏わりついていた。
以前鏡で見た自分の顔はエレンと瓜二つとまで言わないが面影はあるしと思うし、お母さんとお父さんも度々そう口にしていた。
ルネッタとエレンの違いを挙げるならば彼女の琥珀色の瞳とエレンの翠玉瞳だろうか…?
そんなことを思いながら身を捩ったルネッタの体にエレンの腕が更に絡みつき、いよいよ溜息をついた。
……と、いうのは数年前の話。
晴れて訓練兵となり最終成績が上位十人の中に選ばれたルネッタは湧き出る喜びを隠しきれず肩を震わせていた。
これで敬愛する兄と幼馴染みの2人ををこの手で守れると確信を得た、はずだった。
「どこで間違えたかな」
仲間を庇って巨人の胃に収まってしまうなんて不甲斐ない。
エレンは無事だろうか?よりにもよって彼の目の前で食べられてしまったし、激昴して無謀な真似をしていなければ良いんだけど。
チャリ、と首に掛かった鍵を指で弄ぶ。大切な鍵だから無くすなよとお父さんから託されたそれをいつから形見と思うようになっただろう。
「ぐ…っう、あ…」
ずくんと脈打つような鈍痛に意識が揺らぐ。
「父さんルネッタに何するの!?」
「すまないルネッタ、エレン…!」
涙を流しながら液体が入った注射器を向ける父の姿を最後に私は意識の全てを手放した。
***
「あ、れ……」
一面青々した空と私の体を支える半身の姿に思わず顔が綻んでしまう。ここが、私の楽園だろうか。
「…っ、の馬鹿!人に心配かけさせやがって!!」
惜しみなく涙を零すエレンに今に泣きそうな顔で私達を見つめるミカサとアルミン。
私を抱きしめるエレンの体温がじんわり伝わってきて生きている現実を噛み締める。
「ルネッタを食べた巨人がね、いきなり苦しみ出して君を吐き出した後……死んだんだ」
「え…?どういう事なのアルミン」
その場に居合わせた仲間達が分からないと首を振るなかアルミンは言葉を続ける。
「ここに運ぶまで何度も巨人は襲ってきた。だけどエレンに背負われているルネッタを見るなり標的を変えたんだ」
アルミンが何を言っているのか全く理解が出来ない。今だ強くルネッタを抱きしめたまま身動きひとつしないエレンの唇がゆっくり動いた。
「本当に…生きてて、良かった」
背中に回された腕が小刻みに震えている。
エレンの震えが1秒でも早く止まりますようにと祈りにも近い感情を抱きながらエレンの背中に腕を回す。
2人の服から飛び出した鍵が鈍い光を放っていた。
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極夜