駆逐がーる02


長い眠りから目覚めたエレンが真っ先に発したのは唯一の肉親ルネッタの名だった。
ルネッタは無事だと告げたミカサが後ろに控えていた彼女と場所を交代する。

「エレン!」
「皆にエレンが目覚めたことを知らせてくる。あとはお願いしてもいい?」
「勿論!任せておいて」
ルネッタの眦には涙が浮かんでいたがそれに勝る喜びを隠すことなく笑顔に滲ませた。

「エレンの目が覚めてよかった…」
ベッドとの距離を詰めたルネッタの手がエレンの顔を包む。
以前より白く、ほっそりとしたように思えるルネッタの手にエレンの眉間に薄らと皺が寄る。

「俺が目を覚ますまでちゃんと寝てたか?」
上ずった声で返事しながら視線を逸らすルネッタに舌打ちを零したエレンがルネッタの体をベッドへ引き寄せると小さな悲鳴が上がる。
逃がすまいと己より遥かに小さな体を抱きしめたエレンは長い溜め息をついた。

「…その目の下の隈に俺が気付かないと思ってたのか?顔の色も悪いし飯も食ってなかったんだろ」
「エレンも私の体質知ってるでしょ?みんな気味悪がってるんだよ、私のこと。私達によくしてくれたリヴァイ班の人達ももう居ないし…」
琥珀の瞳が揺らぎ、瞬く間に潤んで雫が頬を伝い落ちる。
俺”達”を普通の人間として接してくれていたあの人達はもうこの世界には居ないと改めて突き付けられる無情な現実に吐き気がする。
巨大な木々に覆われたあの空間でエレンは選択を誤った。
結果としてあの場に居合わせたエレンとルネッタを除きリヴァイ班は全滅。それから、それから──?

「…ごめんなルネッタ」
「今こうしてエレンが私の名前を呼んでくれている。それだけでもういいの」
震える手をエレンの首に回したルネッタは微かなリップ音を響かせ彼の額に口付けを落とした。
母親譲りの美しい黒髪に指を通すと絡まることもなくスルスル指の間を流れていく。

「もう絶対にこんな思いはさせない。何があっても俺がお前を守る」
少し力を入れたら簡単に折れてしまいそうな妹の華奢な体を抱きしめエレンもまたそ白い肌に口付けをひとつ落とした。


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極夜