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転校生への洗礼とも言える質問攻めが漸く落ち着いたのは昼休みになってからだった。
椅子に座ったまま全身の凝りを解すために大きく伸びをしていると、隣の彼がお疲れ様。大丈夫?と労ってくれる。
「(君の笑顔と言葉に今この一瞬でどれだけ癒されたか…天使みたいな人だね君は!)」
心の中で涙を流しながらありがとうと返せば遊戯君は頬を染めてまた笑顔を返してくれる。
本当に優しい笑顔の似合う人だ…。
「菜乃ちゃんに見せたかった物は僕の宝物でね"見えるんだけど見た事ないモノ"なんだ。さあ何でしょう」
鞄から壊れ物を扱うように丁重に取り出された黄金の箱の中身。そして今の質問に対するの答えも私は"知って"いる。
やっぱりこの世界はあの作品の中なのか…と改めて突きつけられる現実に小さく息を吐き、そしてそれに答えようとした瞬間彼の手から箱が消えた。
「これがお前の宝物ねぇ…」
「返してくれよ本田君〜!」
飛び跳ねながら必死に取り返そうとする遊戯君をからかい弄ぶように躱す角刈りヘアーの少年はクラスメイトの本田君。
本田君が遊戯から奪い返されまいと投げた箱を受け取った金髪の彼(確か城之内君って名前だった気がする)は遊戯君にコレを取り返したいなら思いっきりかかって来い!と捲し立てる。
優しくて平和主義な彼が力づくで奪い返しに行くだなんて野蛮な行動に出る訳ないと私は思うんだけどなぁ…。
「こんなつまんねー奴と絡んだって楽しくないんじゃねーか?転校生よォ」
「つまらないかどうかは私が決める事でしょ?…それに人の宝物を奪ってはしゃぐ君たちより遊戯君の方がずっと素敵だよ」
「その子の言う通りよ!弱い者いじめするあんたらの顔の方がずーっとつまんないわ!」
『真崎!』
第三者の声に驚きながら真崎と呼ばれた少女を見る。
一瞬の合間に遊戯君の宝物を取り返した彼女が眉尻を吊り上げながら吐き捨てると城之内君達はは分が悪いとばかりにそそくさ逃げ出していった。
「サンキュー杏子」
「あーいうのは大人しくしてたら付け上がるんだし、たまには遊戯もガツンとかましてやんなきゃ!さっきはありがとうえーと…」
「雨之森菜乃です。気軽に菜乃って呼んでもらえたら嬉しいな」
「あたしは真崎杏子。こっちも杏子でいいから!遊戯とは幼馴染みなんだけど今日は珍しく遅刻ギリギリじゃないからって気になっててさ…まさか転校生の菜乃と一緒に登校してるなんてねー」
「ち、違うんだ杏子!」
矢継ぎ早に言葉を返す遊戯君。
私の原作知識が正しければ遊戯君は杏子ちゃんに片想いしているんだっけ…?疑われたままじゃ可哀想だし私も弁明しなきゃ!
「越してきたら遊戯君と家が近くてね?父もお爺さんと知り合いで無理言って一緒に登校してもらっただけなの。何も怪しくなんてないんだよ!」
言い終えて二人を見れば杏子ちゃんは唖然とした顔になっており、遊戯君も上手く形容し難い複雑な顔のまま錆び付たブリキ人形のようにぎこちなくと頷いている。
「(私の何がおかしかったんだろう?全く検討つかないや)」
釣られて私も首を傾げると遊戯君も杏子ちゃんも乾いた笑いをもらしていた。…なぜ。
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極夜