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1日の疲れでクタクタの帰路を遊戯君と杏子ちゃんの三人で肩を並べて歩く。
彼は黄金色の箱に眠るパズルを八年間、願いを叶えたいと思いを込めながらトライし続けている事を話してくれた。
願い事は超完全密封真空パックの永久保存版の秘密だぜー!との事で教えてもらえなかったけど私は知ってる。
彼の願いは後に叶い、命を賭けていいと思えるような素晴らしい友に恵まれる事を。
(それが羨ましくないと言えば嘘だ。)
「いらっしゃい」
「ギャアアアア!!」
女の子らしからぬ悲鳴を上げたのは久しぶりに遊戯君の家へ遊びに来た杏子ちゃん。
パズルをお爺さんの形見と聞いていたらその人は既に故人だと思っちゃうよね。現にその話を聞いたお爺さんが遊戯君に詰め寄ってるし。
「菜乃ちゃんのそのバングルもその千年パズルと共に見つかった物らしくてな。王墓発掘隊がファラオの墓から持ち出したんじゃが、その後発掘に立ち会った者全員がー」
「ゆ、ゆ、遊戯君私帰る!携帯番号とアドレスありがとうね、落ち着いたら返すから。また明日!!」
このバングルが王墓から発見されたものだって?お父さん私にそんなこと一言も言ってくれなかったぞ!?帰ったらとっちめてやる!
お爺さんの声を遮って遊戯君達にに手を振り別れを告げると私は駆け足で店を後にした。
***
走る、走る、走る。
息が上がって心臓がズキズキと痛みながら音を刻み足がもつれそうになるのも気にせず、私は救急箱を携えて"彼ら"を探していた。
「払うモン払ってもらうぜ!ボディーガード料…しめて二十万!!」
「遊戯君!それに城之内君、本田君!」
風紀委員の腕章を付けた厳つい男子生徒がじとりと私を見下す。
傷だらけで血に汚れた遊戯君は私だと分かると痛むであろう体に鞭打って立ち上がった。
「何でここに…?」
「さっき遊戯君がこの人に付いていく所を見えて…何してるんですか風紀委員が」
「見て分からないのか?オレは遊戯君に代わり奴らに制裁を加えてやったんだよ」
「遊戯君が貴方にこうしてくれと頼んだ?それに二十万だなんて普通の高校生に払えるはずないでしょう!」
「煩いなァ…痛い目見なきゃ分からないか!?」
殴られる!そう思って救急箱を盾に目を瞑り体を丸める。直後鈍い音と耳を刺す呻き声が周囲に響いた。
「女に手をあげようなんざ性根完璧に腐ってやがる……」
「城之内君!」
私の代わりに殴られた城之内君が口内の血を吐きながら牛尾を睨み上げる。
負け犬の遠吠えだと吐き捨てた牛尾は二十万円を持ってくるよう釘を刺すと姿を消した。
「とりあえず急いで消毒と止血しなきゃ!絆創膏に包帯、沢山あるから遠慮任せておいいて!」
「…悪ぃ雨之森」
近くの蛇口でハンカチを濡らし十分に砂利を拭ってから目を避けて消毒し絆創膏を貼っていく。
「私のせいで余分に一発貰っちゃったね…ごめんななし」
「俺が勝手にした事だ雨之森は悪くねーよ。
それにわざと教師にはチクんなかっただろ?」
感謝するのはこっちだと頬の絆創膏辺りを掻きながら小さくサンキューと城之内君は言った。
もしさっきの現場に先生が居合わせていたなら風紀委員と彼ら不良生徒、どちらの言い分を信じるかなんて火を見るより明らかだ。
その事実ばかりは仕方ない。という考えと立場でした人を見ることの出来ない教員に猛烈に腹が立った。
お腹を摩り覚束無い足取りで立ちあがり去り行く城之内君と本田君の背中を見つめた後遊戯君の横に膝をつく。
「菜乃ちゃんどうしよう…」
「大丈夫だから。遊戯君落ち着いて」
「二十万なんて用意出来ない!それに君まで巻き込んで…僕は最低だ!!」
事の顛末を知っているのに話す事が出来ないもどかしさ。
私の身を案じてくれる優しい彼に気休めの月並みな言葉しか掛けられない自分が歯がゆくて腹立たしくて奥歯を噛む。
肩を震わせ薄らに涙を滲ませる彼に私は"根拠なく"大丈夫と漏らし背を撫で続けた。
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極夜