あるべき場所
重苦しい沈黙が私と彼の間を包む。目の前の人物のこめかみに浮かびあがった青筋がまた恐ろしい。…あまりの恐怖心に今にも泣きだしてしまいそう。
「…何故、こうなったか分からない、と?」
「仰る通りです。昨日一昨日と遊戯君達と体が入れ替わった時点で何か原因があるとするならわたし…ひっ!」
瞳を細く鋭利な形にし視界が交わった者全てを沈黙させかねない威圧感を全身に受け堪らず悲鳴を上げる。
……とどのつまり今度は海馬君と私の体が入れ替わりまして、現在KCの社長室にお邪魔しております。
「すまん菜乃。いきなり睨みつけてしまって」
「私の方こそごめんね海馬君に迷惑かけて。お仕事に関して問題はない?大丈夫?」
私、もとい海馬君がふぅんと鼻で笑う。聞けば今日は特に大事な用事はないらしく、元から学校へ行くつもりだったらしい。
運が良かったと胸を撫で下ろした自分の視界にパジャマが映り込む。
登校するつもりなら早く着替えな……いと?
「1つ聞きたいんだけど海馬君、体が入れ替わってから着替え、た?」
「何を今更…お前は昨夜制服を着て眠りについたのか」
「うわあああ!なら遊戯達にも私の体見られてたってことじゃない!恥ずかしいぃ!」
「何?菜乃貴様、遊戯と何をしていた?」
「学校に行くためには制服着替えるでしょ?…つまりそういう事だよ」
「そんな事か。見られたところで減るものでもないし安心しろ」
「そういう話じゃないからね!?」
意を決してパジャマのボタンに手を掛ける私をじーっと見つめてくる海馬君(私)と視線が交わる。首を傾げながら伺い見れば彼の唇が弧に描いた
「早く着替えないと遅刻確定だぞ」
「(そんなまじまじ見られたら誰でも着替えにくいと思うんだ)…えっ遅刻?」
机上の時計が指し示す時刻に海馬君の間抜けな叫び声が響いた。
「海馬君も私の体見てる…おあいこ、おあいこ、おあいこ…」
目を伏せて極力肌色を見ないようにしながらの着替えを終える頃にはよく分からない疲労感に思わず溜め息を吐いてしまった。
一方で海馬君はその一日ずっとご機嫌で、あの海馬君節を度々私の体で披露してくれました。(その度フォローに入る海馬君(私)のシュールさは死んでも忘れない)
その翌日漸くあるべき体へ戻れたときの感動と嬉しさといったら…!ただいま私(の体)っ…!!
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極夜