SSまとめ


お弁当
「菜乃ちゃんどうかしたの?」
「ああ遊戯君。今日お父さんの弁当要らなかったのにいつもの癖で作っちゃってね、誰かにあげようかと持ってきたんだけど貰い手がなくて」
そうなのかぁと相槌を打った遊戯がチラリ、ともう一人の自分に視線を投げた。
突然目が合った事を不思議に思いながら相棒どうかしたか?と首を傾げつつ彼も話しかける。

「今もう一人の僕に聞いたら俺が食べてもいいか?だって!」
ー俺はそんな事一言も言ってー
「本当に!?遊戯に食べてもらえるなら私もお弁当も嬉しいな。大したおかずじゃないけど気に入ってもらえたらもっと嬉しい」
ずいっと差し出されたお弁当を受け取る半身にどんな言葉を掛けても返事は返ってこない。
菜乃が席を外してやっと目を合わせてくれた相棒は満面の笑みを浮かべながらこう言ってのけた。

「菜乃ちゃんの手料理食べてみたいって前から言ってたし良かったね。それにしてもお弁当箱大きいなぁ。君一人で食べられる?」
ー相棒…ー
「昼休みが楽しみだね!」
(たまに話を聞いてくれなくなる相棒)
***

お土産
「瀬人君居たー!おはよう」
「今日も菜乃は元気そのものだな。俺に何か用か」
「先日シルバーウィークで旅行に行ってきたの。瀬人君とモクバ君には形あるものより食べ物がいいかなと思って色々見たんだけど、ピンとくるのがなくて」
綺麗に包装がされた物を2つ鞄から取り出し俺の掌に置いた菜乃の表情は緊張からか強ばっている。
袋の端に瀬人君、と書かれている包みの封を開いて現れたのは小さな瓶。

「太陽の砂と星の砂って言うの。どちらも綺麗だし瀬人君達にと思ったんだけ、ど…どうかな?必要ないなら捨ててくれて構わないしあの…」
「自分の考えで話を進めるのは止めろ。コレは有り難く頂いておく」
「貰ってくれるの!?センスの欠片も感じさせん土産なぞ要らんって言われたらどうしようかと思ってたから、良かったぁ…」
「…お前が俺達に買ってきた物を要らんと言うはずがないだろう」
フンと鼻を鳴らし蛇足を吐きながら鞄の中にそれを仕舞う。
教室を後にし車に乗り込んだ海馬は傍の弟にアイツから土産だと包みを手渡した。

「オレこれ知ってるぜ!星の砂、だろ?幸せになれるとか何とかって前に聞いたことがあるぜ!」
小瓶を嬉々した顔で見つめる弟から目を離し、海馬もそれを取り出すとほんの僅かながら口元を緩めた。

「次はオレ達が菜乃にお土産やらないと!ね、兄様」
「ああそうだな」
***

移り香
「菜乃最近石鹸変えた?」
「変えてないよ〜何か変わった匂いする?」
深緋の目にあたしを映したまま菜乃は首を傾げた。
菜乃が動いたことで清涼感のある香が鼻腔を擽る。この匂い確かに何処かで嗅いだ気がするんだけど、何だったかしら?

「菜乃と杏子?どうしたんだ2人して気難しい顔で」
「今日は遊戯なんだね。おはよう」
深いアメジストの瞳と視線が交わった瞬間どきん!と心臓が大きく跳ねた。
あたしの気持ちを知る由もない彼は手を挙げながらこっちに歩いてくる。
どくどく脈打つ胸に手を当てながら真っ赤な顔を隠すため俯いた直後その顔を勢いよく上げた。

「(…なんで?)」
もう一人の遊戯から仄かに香る匂いは今菜乃から漂っていたものと同じ。
体を共有している遊戯からも薫った事すらない匂いなのに、一体どうして。

「杏子ちゃん?」
「どうかしたのか?」
アメジストと深緋にの2つの瞳に歪んだ酷い顔が映っている。
宝石のように煌めく瞳を一身に受けたあたしは愛想笑いを返すだけで精一杯だった。


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極夜