劇場版SS


…そんなの、そんな事、

「…出来るはず、ない!」
弱者なりに死に物狂いで抗ってやる!
それが何の意味も成さない些細な事でも、鼻で笑われるような結果で終わったにしても何もせずにいるよりは絶対いい!!
遊戯と瀬人君、最強の決闘者が二人がかりで挑んでも敵わなかった相手に素人の私が勝てる見込みなんて99.9%無いに等しい。
だけどもし、0.01%でも勝機があるならーーー。

あれだけ沢山いたクリボーも今は本体を残して全て葬り去られてしまった。
震える脚に力を入れて大きな瞳を潤ませながら私を見つめてくるクリボーに大丈夫だよ。と声を掛ける。
ー奇跡は起こる、いや起こしてみせる。
信じる事を止めなければ勝利の女神は微笑み新型決闘盤発売にあたって宣伝に協力しろと社長に半強制的に連行された(右腕に新型決闘盤装備)
相棒の呼び方が時を経て呼び捨てに変化
中途半端に終わります

瀬人君の姿が溶けるようにして消える。
彼は遊戯に世界の命運と決闘の勝敗、全てを託したのだ。プライドが高く我が道を往く彼はが。

「……せと君」
カラカラに乾いた喉から絞り出した声は自分でも驚く程に掠れていた。
私の声に大きく見開いた歪な眼球を動かし、こちらを見据えた藍神君は鋭利な歯を覗かせながら狂気じみた笑みを浮かべた。

「あれだけ豪語していた海馬もあっけなかったなァ…安心しなよ君達も直ぐ同じ場所で再会出来るさ」
藍神君が顎で行動を促せば彼のモンスターが鳴き声を上げ、幾多もの目が私の姿を捕捉した。
瞬く間に力を蓄えたモンスターが今まさに瀬人君と遊戯を幾度も貫いた鮮赤色のビームを放とうとしている。
逃げようにも間に合わなし、まずどこにも逃げ場所なんて有りはしないだろう。
絶望の二文字で埋まった脳髄に遊戯の声が響き渡る。衝撃に備えて両腕を動かした時、左腕の決闘盤が煌々と光を持ち始めた。

「(クリ〜!)」
「(…呼べ、ってこと?)」
何処からともなく聞こえる愛らしい鳴き声。勢いよくカードをドローすれば丸くてフワフワとした可愛らしいモンスターが姿を現した。
輝きを増して行く決闘盤から引いた2枚目のカードに零れ落ちそうになる涙を必死に堪える。

「次元の彼方に消え…何ィ!?」
立ち込めていた砂煙の先にあったのは無数のクリボーと無傷の菜乃の姿。藍神君は信じられないと口を開いたまま呆然とし、遠方の遊戯は安堵の表情を浮かべている(気がした)
私が召喚したモンスターはクリボー。そして増殖のカード。
…かつてアテムが愛用し、重宝したカードコンボが私を救ってくれたのだ。

**
・相棒が膝を着いた辺りまで飛ぶよ!
・オリジナル展開と自己解釈が入ります

「…奴を、呼べ…」
僕を庇って姿を消した海馬君の言葉が崩れ落ちる瞬間再び脳内に木霊した。
もしこの場に彼が居たなら起死回生の術を見つけ出し、不敵に笑っていたかもしれない。
それよりここまで極限の状態に追い込まれる事もなかったかもしれない。
指ひとつ動かすことも叶わない満身創痍な体に菜乃ちゃんの悲鳴が突き刺さる。
大丈夫だよ、と早く返さなくちゃと思うのに声を出す事も憚られるまでに肉体は限界なのだと悲鳴を上げていた。

「遊戯っ…!」
一転して絶望的な状況に追い込まれてしまった。生物の存在しない闇一色に染まった世界へのカウントダウンは刻一刻と近付いている。
"彼"が命を賭けて守りたいと思い、心の底から愛したこの世界から光が失われていくのをただ黙って指をくわえて眺めてるの?掛けてくれると彼から教わったのだから!
敵<藍神君>を睨み付け決意を固めた直後、空から強い光の柱が降り注いだ。
眩い光が空気に溶け、その中に姿を現した少年はゆっくりと瞼を開いた。
そのまま流麗な流れでカードを引き、何かを召喚する。
姿を見せた褐色肌の魔術師<モンスター>は左胸に手を当て少年に心臓を捧げる所作をすると奥で必死に意識を留めている遊戯に深々と頭を下げ、私にもまた深く頭を下げてみせた。


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極夜