2人の薬師寺芽依

薬師寺の準備を先ほどの機械の置いてある部屋で待っていると、隣の部屋から呻き声のようなものひかりは耳にした。
「勝手に人様の家でうろうろするのも良くないわよね、ここで待っていましょ。」
ひかるは開けた空間に座り込んで芽依が戻ってくるのを待った。

しばらくするとノイズのかかったブザーが突然鳴った。ビクッとし立ち上がり何が起きるのか、何かしなければいけないのかと狼狽えていたところ、階段を降りてくる音がし、何かあったんだなぁとひかるは察して再び座り込んだ。
「水が切れてるのは問題だなぁ。自動供給にしたはずなんだが。」
「どこか断線してるのか?判別できるようにする機械も作るか〜。」
「材料、お金は?」
「ある、足りなければ大学に出して貰えばいいだろ、これが開発できれば社会的貢献になるだろう。」
「私はこれからまた出かけてくるからすぐには無理だぞ。」
「さっき白髪の女が来たのを見たぞ、あとブザーの音でビビってたのも見た。」
「覗き見は趣味が悪いなぁ、とりあえず水な。」
「君の“相棒”にも会わせてくれよ。」
芽依はキッチンに行き5Lのペットボトルの水を持ち、ひかるにこちらにくるように言った。ひかるは何のことだかわからないのできょとんとしたままついて行った。

「湯川ひかる、回歴同好会の仲間だよ。」
「湯川ひかるか、名前は知ってるよ。大学のデータベースで見た。初めまして、薬師寺芽依です。どうぞよろしく。」
二人同じ姿の薬師寺芽依がいるのでどちらが知り合いなのかわからなくなる。声まで同じ。服装で判断するしかないわ。黒髪でボブヘアーなのも一緒。少しボサついてるのが“初めまして”の薬師寺芽依、ガーリーな服を着ているのが“いつも”の薬師寺芽依。そのようにしないと判別がつかない、遺伝子情報も一緒なのではないかと思われるほど完全に同じ姿をしていた。
「初めまして、湯川ひかるです。よろしくお願いします……。あの、ここは……。」
薄暗く、床一面に何らかの部品が転がっており、壁にはボタンがいくつかついておりどうやら改造された部屋なんだなということが直感的にわかる。そんな部屋だった。この部屋でもう一人の薬師寺芽依は布団であぐらをかいて足の上にパソコンを置いて座っていた。
「私の部屋だよ。外に出るのは面倒で家を改造してるんだ。ここにあるボタンを押せばほら、サプリが出てくるといった感じでね。」
「ここで共同で平行世界探索のための機械を作ってるんだ。」
「そうなんですね。にしても暗すぎる気が……。」
「光が苦手でね、外に出てないんだ。」
「代わりに私が大学に行くという約束でここに居候させてもらってるんだ。」
「あと私の面倒を見たりとかな、早く水くれよ。」
あぁ、悪い悪い。と言いながらペットボトルを渡すと”薬師寺芽依“は壁の青いボタンを押した。すると一部分だけが外れるように開きそこにペットボトルを入れ再びボタンを押して壁を閉じた。そして乱雑な字で「水」と書かれたテープが貼られたボタンを押した。するとまた壁の一部分が開きコップが出てきて水が注がれた。
「何だか面白い部屋ですね。」
「もうちょっと改造する予定ではあるけれどね。」
「まぁ金は一応あるから出来るがそれよりも私は同じ平行世界からやってきたものを一瞬で判別する機械を開発してほしいよ。今回みたいに細かいものでもわかるようなものがあると便利だよね、そう思わないかい?」
「可能ならそうですね。」
「面白いと思わないかい?そんな機械があったら。」
「いいね。作ろうか。」

“薬師寺芽依”は立ち上がり髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きながら『機械部屋』と呼ばれる先程の一室に向かった。

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