立会人の仕事というのは誕生日だろうと年末年始だろうと関係がないものだと理解はしていても多少気にはしてしまうものだった
代理で呼ばれたとはいえあまりにもつまらずに部屋に飾ってある知恵の輪を遊んでは崩してを繰り返していればあっという間に仕事を終えて、ふぁ…と大きな欠伸をした頃には時刻は日付を跨ぐ直後であり折角の誕生日が潰れてしまったと嘆きつつも、本部に報告をして帰ろうと足を向ける途中入口にて喉が渇いた為に自販機に小銭を入れて何にするかと悩んでいた時だった
「今日はあんがとうさん」
「門倉立会人」
「すまんな、間に合う思ったんじゃが中々押してしもうて」
「構いませんよ」
後ろから伸びてきた手は勝手にボタンを押して決めてしまい自販機からお釣りが落ちてくる音が広がるように溶け込んだ、謝罪をした門倉は本来専属では無いものの今回の立ち会いに同席するはずだった立会人である
しかし他の立ち会いを終えた彼は間に合わないといい彼女に個人的に依頼したのであった
「つまらん立会やったろ、ほらこれ差し入れ」
「…私のお金ですけど」
「でも好きやろ?」
まぁ…と彼女は返事をしつつ頬に押し当てられた甘いミルクティを受け取った、門倉雄大の多少の強引さがあるものの相手をよく見た行動は案外嫌いになれない部分であった
「こんあとはなんかあるんか」
「報告だけして帰ろうと思います」
「ほうか…それくらい黒服に任せたらいい、ほらいくよ」
「いやダメでしょ」
ええから。と告げて肩を捕まれ彼の車に乗せられあぁ今ならまだ営業している洋菓子店があったからそこの売れ残りを買って帰ろうと思っていたのにと彼女は思っていたものの門倉は何も言わずに彼女の家の近くの居酒屋に連れ込んだ
「珍しいですよね、こんな所でご飯だなんて…っていうか食事に連れてきてくれるだなんて」
大抵彼の周りには人がいる、立会人同士オフでのやり取りは少ないのが賭郎だというのにまさか弐號ともあろう彼がと多少の驚きを感じつつも適当に注文を済ませては運ばれてくる料理に手をつけた
「そういいつつ高いもんから順に食べてんのワシが気付かんと?」
「まぁそう言わないでくださいお金ないんですよ」
「ようい…あぁそうやったね」
立会人という役割をしている人間は大抵社会においてそれなりの地位を築いているものの例外もいる、それが彼女だったと門倉は思い出しては仕方なく彼女が無口で頬張る焼きガニを追加注文してやった
あれもそれもと注文をされては彼女の胃に消えて、まるでそれを肴のようにして彼は酒を飲んでいた、日付もすっかり変わり帰ろうと二人は席を立ち茶番のようなレジのやり取りをして店を出て顔を見合せた、190cm程あろう高身長の門倉は黙って彼女を見下ろした
「酒飲んで帰れんわ」
「代行呼びますよ」
「家近いやろ」
その言葉にだからここを選んだのかと彼女が徒歩で帰れる居酒屋の看板を見つめた、部屋が狭いだとか汚いだとか様々なことを言ってのらりくらりと交わそうとするも彼女の髪を掬った門倉は顔を寄せてその鋭い瞳でじとりとみつめた
「誕生日祝って欲しいんやろ」
「…そんなのとっくに過ぎて」
そう返事をする前にタクシーを呼び止めた彼に手首を捕まれ乗せられてしまえば何も言えずに手を絡め取られ彼は行き先を告げる、家とは真反対だとかそっちはホテル街だとか本当に誕生日を祝う気はあるのかだとか言いたい気持ちを押さえ込んで手を握り返しつつふと気付いたことを口走る
「全部わかってたんですか?」
「さぁ…どやろな」
窓の外を見つめながらそういう彼に自分はまだまだ彼には適わぬ番号の低い立会人なのだと思いつつ顔を下向けた、誕生日を知ってくれていたなんて喜ぶのにはまだ早いから
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