ラチェット


ショートケーキは先生のお味

基地に来た彼女の手には小さな四角い箱、なんだいそれはと声をかければ彼女は嬉しそうな顔で大きな企画が一段落終えたからご褒美だといった。
そうして彼女はいつの間にか置いていたらしい食器を片手に自分専用の椅子に腰かけてテーブルの上の皿に三角形の真っ白な生クリームの塊のように見えるもの、頂点には美しさすら感じるまるまると大きな苺がひとつ乗ったそれを取り出して飾り付けるように乗せた
2時間並んで買った甲斐がある。と零す彼女にカメラアイで読み取ればカロリーの塊でしかないそれに2時間も?と人間は不思議なものだと思う

「スポンジケーキに大量の生クリームにカスタードも少しあるようだ、僅かに苺が乗ってるがバランスとしてはあまり」
「もう先生ってばこれはね?見るのも食べるのも栄養とかそんなものじゃないの」

娯楽でご褒美なのよという、そういえば近頃クリスマスとやらが近付いて街やテレビは赤と白に彩られ似たような円形のものがよく広告に張り出されているなと思い出した

「ご褒美というくらいだから好きなんだね」

いいことを知った、今度なにかプレゼントをする時はこれを作ってみようかと思っていればフォークで綺麗に切り取って口の中に放り込む彼女は至福の表情を浮かべていたのにこちらをみていた
なにかおかしな事でも?と思えば彼女はフォークでいちごをツンとつついて白いクリームが僅かに残る唇を開く

「好きだよ、ラチェット先生みたいだから」

いつだって私は先生のことしか考えてないから、普段はショートケーキなんて食べないんだよ?といって大きないちごを頬張って嬉しそうに微笑んだ

「あぁそのなんて言えばいいのやら」
「クリスマス楽しみにしてるね」
「ショートケーキで?」

そう問いかければ彼女は首を振る、先生がいいな。というからもう降参だと手を上げた彼の表情は酷く緩んでいたことだろう

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