ホイルジャック


「そんなわけで結婚しまして、あっこれウチの奥さんです」
「やだもう恥ずかしい、これつまらない物ですが」

そう騒ぎ立てる二人の存在にサイバトロン戦士達は息を呑んだ、コンボイ司令官はあまりの出来事にブレインが追いつかなかったらしく「ほわ・・・」と呟いたしマイスター副官も「え?なんて」といった

「いやせやから、吾輩の奥さんって」

ホイルジャックがみんなを招集した為にまた何か作ったんだと彼らは思いつつ仕方なく集まったが朝一番からそのような報告を受けてざわめいた、あのホイルジャックがだ・・・結婚を?と彼の足元を見ればさらに彼らは油を刺し忘れたかのようにぎこちないものになる
派手な巻き髪に長過ぎる手の入れられたまつ毛と指先の派手な装飾にまるでクラブにでも来たのかと聞きたくなる肩を出した煌びやかな格好、濃い顔の塗装・・・もといメイク、全てが全て彼らには理解出来ないものだがその存在はぴっとりとホイルジャックの足に抱き着いては「よろしくお願いします」とニッコリと微笑んだ

まさか彼が結婚だなんて
あぁそれも"あんな子"とだ

早速ホイルジャックのラボに引き篭った二人に仲間達は次々と噂話をした、あんな人間見た事あるか?夜のNYでなら、塗料も派手だし芳香剤?ワックス?いや香水の匂いも強かったしあの爪はなんなんだ?と彼らはあまり好印象では無かった彼の"奥さん"の話題で持ち切りだった
コンボイ司令官から基地内での同棲を許可された彼女は早朝から起きては忙しなく働いた、日中もホイルジャックの傍で彼をニコニコと眺めては愛の言葉を囁いては適度に休憩を取らせ、夜になれば洗車をしてやり二人の時間を楽しんで眠りにつく
そんな二人を見たサイバトロンの面々は素直に羨ましく感じた、そもそもあの派手な若妻は彼らが思っているよりもずっと家庭的で献身的な乙女であったのだ、困ったことがあれば率先して手伝いをし(困ってる人を放っておけない性格が好きだとホイルジャックはいう)見た目とは裏腹に機械に詳しく(学生時代の知識だと謙遜して笑うところが可愛いだろうとホイルジャックはいう)派手な見た目は自分の好きに嘘をつかないためで(自分の芯を持つ女性は素敵だとホイルジャックはいう)

「だからねぇラチェットくん、結婚も悪かないね」
「そりゃあそうだろうね、てっきりまだまだ独身だと思ってたんだがね」
「吾輩もそうおもってたんだけど・・・」

向かいの席でエネルゴンを加工した彼の妻特製のランチを食べるホイルジャックは言葉をためるものだから何なんだとみつめれば、そりゃあもう堪らないと言わんばかりの顔で彼は破顔しながらいうのだ

「あんまりにも可愛くアピールされちゃったもんだから」

精々幸せにしてろ。とラチェットは旧友に思った。決してこれは嫉妬や妬みでは無い・・・いやまぁ羨ましいとは思うもののきっとホイルジャックだからこそあんなヒトを娶れたのだといやでも理解してしまう、遠くから彼を呼ぶ聞き慣れた女の声にホイルジャックは「ほんじゃお先に」というものだからあぁ畜生そんな幸せな顔をしてくれて。と思わず呆れて笑みが溢れる、視線を向ければ彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩くホイルジャックと必死に彼の歩幅に合わせようとする彼女は何処からみてもお似合いの夫婦だろう。

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