ゴーストは足音を立てて歩いていた、任務が長引くことはよくあることで家に帰れないことも突然だ、それに腹を立てていても仕方がないと理解しつつも帰れると言われた予定日からもう三週間は過ぎていた、それとこれもテロリストだとかギャングだとか下らない連中達のせいだ
次から次へと全く暇人共がと内心毒を吐きつつようやく久しぶりにまともな個室で休めると彼は基地内に与えられた自身の部屋のドアを開けてはロックをし、質素な備え付けテーブルの上に置いてあるパソコンをみつめてそのマスクの下でごくりと喉を鳴らした

時計を見ては真夜中だと理解しつつも彼は開いた眩い液晶画面を操作してひとつの通話アプリを開いた、ログイン履歴は数時間前かと思いつつ一人の相手の通話アイコンをクリックした
通話待ちをしている音が聞こえる中でゴーストはイヤホンに切り替えてデスクトップ画面を見つめマスクの下で口元を緩める、10回目のコールの辺りで流石にダメかと操作をすると同時に画面が切り替わり通話モードになった

『はぁい、私のおばけちゃん?』
「寝てたのか」

間延びした女の声に子供じみたあだ名を呼ばれた彼は普段通りの声色で通話相手の声を聞いては予想通りだと内心呟いた
深夜二時に起きられるほど夜更かしが得意な女では無いのは昔からであり、ふと画面がさらに切り替わりノートパソコンの画面の中にはアイコンだった女が寝ぼけ眼でベッドライトを付けてみつめていた

『こんな時間だもん、そっちはまだ日付は変わってない?』
「まだな、そっちは今二時くらいか?」
『そう、もう今日もお仕事でくったくたでさ…』

ねぇ聞いてよ。なんて無邪気に笑う女との通話の時間だけはまるで戦争な紛争など忘れられる時間である
オレンジの薄い電気がついた薄ぼんやりとしたベッドの上で笑う彼女の指についた一般的な結婚指輪に心做しか喜びを感じつつ大した話ではないソレに相槌を打った、コロコロと変わる表情を見つめては眉間のシワが緩んでることなどきっと誰も想像はつかない
ゴーストという男がそもそも一人の一般女性と結婚しているなど、それこそ限られた存在しか知らないからだ

「コーヒー飲むと歯が黒くなりません?」

たまたま行ったコーヒーショップで問いかけてきた店員を無視しようかと思いつつも残念ながらその店員一人で回しているらしい店はガラガラで、向けられた声は完全に彼一人だ

「…黄ばむ、だろ」
「あっそっか、まぁ紅茶もそうなんですけどね」

あははと笑う女から手渡されたコーヒーになぜ紅茶なんだとマスク越しにみつめれば「私コーヒー飲めないんです、みんなあんなに苦いのになんで好きなのかなって思って」というものだからゴーストも本来は紅茶派ではあるが仕事中はコーヒーで眠気を覚まさなきゃやってられないのだと胸の内で答えた

そんな女が今の彼の妻だった

『最近よく来る大学生の子がね、映画のチケットくれたの』

通話越しに無邪気に話す女に彼は柔らかくなったはずの眉間に強く皺を寄せて睨めば彼女はサイドチェストを漁って二枚の紙を取りだしては画面越しに見せつけた

『サイモンと行きたいから二枚ともちょうだいって貰ったの、帰ってきてやってたら行こうね』
「…そうだな」

危うく戻り次第その大学生とやらを銃は不要でも拳で脅さなければならないのかと感じていたがどうやらそれは不要なようだった
広めに買ったキングサイズのベッドは今日もまた彼女一人で広々としており、いつの間にやら大きな抱き枕やらぬいぐるみが増えており寂しさを隠すようだった

『…まだ、遅くなる?』
「来週には帰れるはずなんだがな」
『そっか、じゃあサイモンの好きなもの沢山用意してる』
「ナマエ」

明るく笑うその女は自分には無いものを持っている。明るくてまるで太陽のようであり夜闇の月のような輝かしさも持っていた。
きっと誰も聞いた事のない程優しい声で彼女の名を呼べば優しく返事が返ってきて、ちゃんと帰るから安心してくれ。と約束の出来ぬことをいえばこくりと頷いて笑った

楽しそうに画面越しに話をする彼女にゴーストはどうしようもなく、欲情していた、寝る為に着ているパジャマはいつも薄手のキャミソールで、動く度にチラチラとその素肌を見つめるうちに彼は熱を感じ、そしてこの通話の本来の目的について声をかけた

「そろそろ"みたい"んだが」

その言葉にピクリと肩を揺らした彼女はそれまでの明るくい声がだんだんと落ちといき、そして画面をじっと見つめて困ったように眉を下げた
互いにその行為が当たり前になるほどというのは褒められたことじゃない
ゴーストはノートパソコンを僅かに内側に傾けては自身の足元まで写るようにみせた

「いいな?」

拒否権のない夫の言葉にそれまで無邪気だった妻は「…うん」とか弱い声を零してはベッドの上で大方寝転がる自分の上に置いていたであろうパソコンをサイドチェストの上に置いては手馴れたように何かを操作した、ゴーストの画面が切り替わりカメラは一点ではなく数箇所でまるで監視カメラのようだった

「イヤホンを忘れるな」

しっかりと指示してやれば彼女は生活音のみで返事をしてサイドチェストの中のイヤホンを取り耳に装着させて『できたよ』と震える声で返事をした。

一般的な夫婦が新婚という期間にゴーストはハナから彼女の傍にいなかった、元から軍隊の特別忙しい部隊に所属をしていると付き合っていた頃から伝え、ろくなデートもしてこなかった彼に、それでも真っ直ぐと「あなたの帰る家になりたい」と微笑んだ女に彼は人生で初めて白旗を振ったのだ
数ヶ月離れて突然帰宅して数日後また直ぐに出ていくという彼の生活に寂しさを覚えるのは当然のことだが、ナマエも気丈な女で気にしないといった
しかし先に音を上げたのもこれまたなんとゴーストだった、軍内でのくだらない話を耳にしてしまったのだ

「嫁が抱いてくれないからって浮気してやがったんだ」

その単語はゴーストにとって背筋が冷えて腹の中の臓物全てがひっくり返るような言葉だった、幸せな家庭の崩壊、そんなことはよくある事だがそれでもあの笑顔が離れることは耐え難い
そしてどれだけゴーストが周りから伝説的な男だと勝手な武勇伝を語られたり想像されても、彼も所詮は一人の男だ、溜まるものは溜まる

「それじゃあ脱いでくれ」

だからこそ二人は遠い距離だとしても、互いを感じるために画面越しにセックスをするようになった
キャミソール型のワンピースの肩紐を解いて薄明かりの下でゆっくりとその布が脱がされていく、三点のカメラはそれぞれ別の形で彼女を捉えており、それは全てゴースト自身が設置したものであり、彼が操作すればカメラは音を立ててズームしたり下がったり角度を変えたりと、まるで彼自身の目のようだった

「なんだ今日はそういうつもりじゃなかったのか」

からかうような声色で素っ気ない下着について問いかければ画面の奥の彼女はベッドの上でオロオロと返事に戸惑いつつも『今日は忙しいからダメなんだと思ったの』と返事を返した
数時間前にオンラインになっていた時点で彼女は待っていたのだと理解している、この行為がではもちろんなく、愛する彼の声を聞くことを、彼の任務地によっては生活は真反対になり全く話ができない時もある、場所によってはそもそも通信が届かないことも

「俺が帰る時には最高の姿を見せてくれるんだよな?」
『それはどうだろ、日が分かったらたっぷり下準備してあげるけど』

どうせもうすぐクリスマスシーズンだし。という彼女にそんな時期かと忘れていたことを思い出す
そんな軽口に頬が僅かに上がりつつ彼はイヤホンに向けて「触れてくれ」と指示を出した、銃跡ひとつもない躯に手荒れも無さそうな手のひらが乳房に触れる、まるでゴーストが彼女を抱いている時のように下から上に撫で上げて、色付く乳輪を指先で縁取る彼女は大きかった目を細めて心地よさそうにした

「そうだ、撫でて揉んで、好きだろ?摘んでもらうのも」
『ぁ…♡…うん』
「俺がするよりも強くないか?本当に好きなんだな」
『ッ♡…そ、んなこと…♡』

背中にクッションを挟んでもたれ掛かり胸元を自分でかわいがる彼女に椅子に深く腰かけてはゴーストはじっくりと眺めた、どれだけ自分の口で指示をしても結局のところ自分の快楽が優先となるため、そうした責め方が好きなのかと感じ学んでいたからだ
正面カメラをアップして顔と胸元をみればそこには欲に濡れた彼女が自分の手で胸元を必死に愛撫し、彼のイヤホンには吐息が聞こえた、ふと全体を映す上からのカメラをみれば足を開いた彼女のソコがオレンジの光に照らされて光っていた、興奮状態がハッキリ見て取れる姿に彼は思わず空いている片手を足の間においてテントを張るそこを布越しに揉んでやった

『サイモン…♡だめ?』
「仕方ないな、ゆっくりだぞ」
『うん♡♡わか、てる…ッ♡』

胸元を可愛がっていた彼女の手が下に伸びて茂みを撫で、指がその中に潜ってゆく、くちゅりとイヤホン越しに吐息と違う音が聞こえてその興奮を耳元で感じつつゴーストは自身の股ぐらを撫でる手を強めた

『はぁ…あ♡…っサイモン♡』
「あぁ指を入れていい、中指だぞ、ちゃんとカメラで見てるからな」

そうだ、全てが見えている、横からも上からも正面からも。
茂みの中に伸ばされた手を見つめては大きく見せるように足を開いた彼女が中指を濡れた場所に難なく沈めてはカメラをみつめた

「奥を叩くんだ」

態とらしくゴーストは机を指で叩いた、トントントンとリズム良いソレにナマエは合わせて指を動かしては甘い声を出す
決して彼にされている訳では無いのに、鼓膜に直接届くその声と音に合わせた自らの快楽は彼女を乱す、次第にクッションに背を預けていた彼女はズリズリと落ちていくのを眺めてその方法がやりやすいことも、指が届かずに恋しいことも理解していた
上からのカメラで見た彼女はまるで男に抱かれているような姿であり、瞼を閉じれば彼女を抱く姿を簡単に想像できた

『サイッ…♡あぁっ…ンッ♡』
「いい声だ、だが足りんだろう、指を増やしていいぞ」
『んっ♡ぅ、ん♡♡』

ゴーストの声はギリギリにしか届いていないのかナマエはもう彼の指の音を聞かずに自分を慰めた、近くの枕を手繰り寄せてシーツを乱してベッドの上で一人ごっこをこなす姿にゴーストは硬くなったモノを未だに解放しないが掴んで扱いた

『サイ…っ♡イッく、イキそう♡♡』
「あぁいいぞ、ちゃんと見てる」
『〜〜ッあぁ♡♡』

ぎゅうっと足の指先を丸めてシーツを掴んだ手に力が込められて肩で必死に息を整えるナマエをみて彼は息を吸い込んだ
熱い吐息がイヤホンから聞こえた、生の声とは違うそれでも今はそれでよかった、ゴーストはズボンのファスナー下ろして下着ごと足首まで下ろしてパソコンのカメラに映るように自身の下半身を見せた
これが恋人や夫婦でなければただの犯罪者だと理解していながらもそうした非現実じみた行為が離れた二人を満たしている

「お待ちかねの品だぞ」

挑発的に告げればベッドに横たわった彼女の視線がサイドチェストの上に置かれたベッドに視線を向けた、ゴーストは自身のインカメラに自分がしっかりと映っていることを確認し、そしてナマエをみつめた
釘付けだと言わんばかりに彼女は絶頂の余韻を味わいつつもゴーストのソレに視線を奪われているのは明白だ、彼自身も愛するものの姿に興奮していた為そそり立ったペニスの先からはだらしない透明な液体がじわりと滲み出て、その先を求めるかのごとく血管が強く浮き上がっていた

「そんなに熱烈に見つめるだけでいいのか」

彼の言葉に画面の奥のナマエは一度顔を俯かせては枕元のクッションを漁っては一本のディルドを取り出した
何度も見た事のあるそれを枕元に奥ほどに本来は欲望を抱えている妻に内心ゴーストは喜びを感じた、自分だけが彼女を求めている訳では無いのだと

「ちゃんと押し当てて、ゆっくりいれろよ」
『う……ん♡』
「そうだ、奥までちゃんと入れてるか見せろ」
『はぁっ…♡あっ…ど、う?』
「よしいい子だ、動かすぞ」

互いに画面を見つめあっていた、ゴーストが自身のペニスを握り締めてゆっくりと上下に擦ればナマエもまた自分のナカに沈めたディルドを同じ速度で動かした

『あっ♡…んぅ…ふぅ♡』

漏れ出た様な熱い吐息が耳に触れて手のひらに広がる粘着質なかウパー液は本来喜べないものだが、画面の奥をみて悦ぶ女を見れば悪い気分にもなれない
言われたとおり従順に速度を合わせては肌色のディルドを抽挿するナマエをみて、もう随分と慣れてしまったものだなと苦く感じた

初めの頃は本当にオナニーを見せ合うだけの遠距離カップルのようなものだった、しかしながら抱きたいというゴーストの欲望は形を変えて、たまたま気分よく基地内の自分の部屋で冗談でアダルトショップの通販を見ていた際に彼女に与えてやりたくなったのだ

初めこそ羞恥と困惑を覚えていたというのに根元までしっかりと呑み込んでは快楽を得ることが普通となったその姿を目の前で見てやりたいと思いながらそう出来ないもどかしさが悔しかった

「激しく…ッするぞ」
『う…ん♡シテ♡♡』

ゴーストの薄暗い部屋の中でペニスを擦る音が小さくなった、粘着質で卑猥な音は激しくなりより一層興奮を高めて、つけていたマスクの下の呼吸も荒くなる
音を耳にするのは彼女も同じだがゴーストの音を聞きつつも快楽に飲まれゆく彼女は次第に目を閉じて自分を慰めることに夢中となった
ベッドの上でひとりきり、慰める姿をカメラの様々な角度から見てはまるで自分を想って隠れて自慰に浸る女の生活を盗み見ているようにも感じられた

『あぁ♡さいっ、きもちいい♡すきっ♡♡おくに、クルの♡♡』
「俺も感じてる、お前のナカをな」
『ハァッ、あっん♡はげ、しぃの♡♡いつものシテっぇ♡♡』
「あぁ仕方ないな」

画面越しの彼には何も出来ないがナマエは求めればゴーストは自分を求める声に嬉しそうに返事をしてはカメラを操作して彼女のディルドを咥えた場所を見つめれば彼女は自分の快楽を望むように強く押し当てて、そしてクリトリスも撫でていた

「気持ちいいかナマエ?本当に…お前って女は」
『アッ♡はぁ…んっ、きも、ちいの♡♡すきっ…すきなのサイモン♡♡』
「俺もだ、愛してるッ…そろそろ射精そうだ」
『わた、しも♡もう…ッだめ』

声をかけ合うことも限界を感じて互いの声がイヤホンから混じり合うようだった、ゴーストはペニスを強く握り激しく上下すれば座っていた椅子がギシギシと悲鳴をあげて、ナマエもまた足でシーツを蹴る音を僅かにさせて、互いの吐息が溶け合い絶頂の声を小さく呟いては二人は同時に愛を感じた

ティッシュで自身のものを拭い手を拭くゴーストは画面の中でくったりとベッドの上で転がる彼女を見た、汚れたディルドもそのまま放り出す彼女に注意の言葉を入れたいものの余韻に浸っているのを邪魔をしても良くないかとうつらうつらと心地よさそうな目元の彼女を眺めた

「平気かナマエ」
『うん…沢山気持ちよくなっちゃった』
「そりゃあよかった、俺もよかったぜ」

一通り片付けを終えたゴーストはカメラを戻して彼女の顔を映すものだけに変えた、ゴーストが眠る質素な硬いベッドとは違う柔らかいマットレスの敷かれたそこで転がる彼女は特に何も言わずに画面の中のゴーストの顔を見つめていた
パチリと互いの目が合うことは気恥しいもののへにゃりと柔らかく笑う妻をみては悪くはない気分だ

「もう眠いなら寝ていいぞ、また時間がある時に連絡するようにする、無理でもメッセージはできる限り送る」
『うん……ねぇ、来週には帰って来れる?』

不安げなその声に彼女も相当寂しい気持ちなのだろうと感じては確約は出来ないが予定通りに終われば帰れるし、ホリデーシーズンなこともあり少しだけ長く家にいられるだろうと告げればナマエは嬉しそうに笑ったあとソワソワと落ち着きない顔をした

「…どうした、クリスマスプレゼントの準備が大変になるってか?」
『あぁいや、そうじゃなくて…私が欲しいから』
「なんだ何が欲しい、なんでも買ってやるよ」

大抵物よりも思い出を大事にする彼女が珍しいと感じつつ、車か?新しい家か?高級バッグにアクセサリーか?と思うが彼女はゴーストを見つめて告げた

『貴方が……サイモンがほしい、一晩中…抱かれたい』

気恥しさがキャパオーバーしているというように近くのクッションを手に取って顔を埋めて呟いてはじたばたと暴れる彼女にゴーストはマスクの下で呆けた表情をした、それはきっと仲間も見た事ないほどに呆気を取られたものだった

「お前っ、あぁくそ!!絶対帰るからな、ツリーが見に行きたかったって言っても俺は聞かないぞ」
『家にあるから大丈夫、チキンも買ってるし』
「それならもう家から出なくて平気だな、あぁ畜生…早くお前を抱きしめたくなる」
『私もだよおばけちゃん』

柔らかいその声はイヤホン越し以外で聞くことなどあまりない
それほどまでに彼女の声は柔らかく彼のいる世界とは正反対なものなのだ、瞼が落ちそうな彼女に「遅くなったな、おやすみ」と告げれば彼女も薄く笑みを浮かべて眠気が限界だったようで「おやすみ、私のハニー」と甘い言葉を告げて画面は黒く切り替わってしまう

何も聞こえないイヤホンにゴーストは恋しさを感じつつ外しては画面を操作して録画停止を押してファイルを誰も知らない機密ファイルの奥に片付けた

話したい事も、触れたいと思う気持ちもずっと変わらないと感じつつファイルの中の一枚の写真を開いてはそこに映る自分と白いドレスの彼女を見て、早く来週に早くこんなクソッタレな任務など終わればいいと感じながらようやくシャワーでも浴びるかとパソコンの電源を落として椅子から立ち上がるのだった。


2025.02